水戸地裁で裁判員8人全員解任

裁判員ら8人全員解任、全員が辞任申し出 選任やり直しへ 水戸地裁
2014.1.15 21:28
 水戸地裁で17日に判決言い渡しが予定されていた裁判員裁判で、補充を含む裁判員8人全員が15日までに辞任を申し出た。地裁はこれを認めて全員を解任し、同日、新たに裁判員候補者の選任手続きをやり直すと発表した。こうしたケースは極めて異例。

 この裁判は、昨年9月に茨城県ひたちなか市の木造2階建ての自宅に火を付けて全焼させたとして、現住建造物等放火罪に問われた男(65)について審理していた。

 地裁は9日、裁判員6人と補充裁判員2人を選任。初公判があった14日までに、裁判員1人と補充裁判員1人が辞任を申し出て、地裁が認めて解任。その後、論告求刑が予定されていた15日にも、開廷前に裁判員1人が辞任を申し出て地裁が認めた。

 裁判員が6人に満たないため、地裁が公判期日を取り消したところ、残りの5人からも辞任の申し出があった。

1月14日が公判の初日、15日が論告求刑、16日が評議で、17日が判決言い渡しの予定だったのだろう。

1月9日に裁判員を6人と補充裁判員2人を選任し、初公判までに2人が辞任を申し出た時点でギリギリ。判決言い渡しまで乗り切らなければならないところ、途中で辞任申出者が出た時点で、続行不可能。

公判期日を取り消し、改めて先の期日に公判を入れる流れを説明したところ、裁判員全員が「私たちはそんなにヒマじゃない。休めない。」と言い出したという流れか…。

私が経験した裁判員裁判でも、裁判員6人と補充裁判員1人が選任されていたところ、公判期日に1人が辞任を申し出、公判期日を補充裁判員なしで乗り切ったことがあった。

そのときは、ここで誰かが辞任を申し出たらどうなるだろう?と疑問に思っていた。公判1日、評議半日の事件でも甘く見ると危険ということだ。

補充裁判員の人数を決めるのは裁判長の裁判官だが、見込みが甘いと、このような自体が生じるのだと思う。

今回辞退した水戸地裁の裁判員は何か理由があって辞任を申し出たものであろうと思う。ただ多くの人たちが当初の召集にも応じずに選任されなかったり、選任手続で辞退事由を主張して結果的に選任されないのに対し、当初そういった主張を堂々とできずに裁判員に選任されてしまった人たちが選任されてから後悔し、土壇場で辞退するのは、「なんだかなぁ」と思う。

裁判員制度には、国民の感覚が評議や判決に反映されるというメリットはあるとは思うが、他方、どこまで責任感を持った判断をされているのだろうと疑問に思うこともある。

本音では、「裁判員やりたくない」という考えを持つ人が多いのだろう。そのような人が多い中で、選任に応じる積極的な人や拒否できない人ばかりが裁判員になるいびつさ。そして、罰則が怖くて渋々選任に応じているが内心やりたくない人の多さ。私は、この状況を「国民の意識の反映」などと手放しで称賛することはできない。

弁護士保険、弁護士費用特約の使い方

弁護士保険、弁護士費用特約を知っていますか?

弁護士保険」とか「弁護士費用特約」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。

これらは、日本では、自動車保険(共済)、火災保険、傷害保険の特約として、各損害保険会社・共済協同組合から販売されているものです。

自動車をお持ちの方であれば、自動車保険(共済)に入る際に、「弁護士費用特約」はどうしますか? と聞かれた経験があるかと思います。

「弁護士保険」と言っても「弁護士費用特約」と言ってもかまいませんし、保険会社によっては「弁護士費用補償特約」と呼ぶこともありますが、ここでは、「弁護士費用特約」と呼んで話を進めます。

弁護士費用特約が使えるのはどんなとき?

弁護士費用特約がどんなときに使えるかは、その保険の契約書に書いてあります!

・・・というのが正確な答えではありますが、不親切ですので、多くの場合はこうです、ということをご説明します。

ここでは、自動車事故を例に挙げて説明します

弁護士費用特約が使えるのは、

  1. 契約中の自動車の搭乗者が自動車事故に遭って、死亡・後遺障害・ケガによる入院通院といった損害を受けた場合(人的損害、人損
  2. 契約中の自動車の搭乗者が自動車事故に遭って、その自動車など所有・使用・管理する物品に損害を受けた場合(物的損害、物損
  3. 記名被保険者(大雑把に言うと保険の加入者)等が受けた損害については、契約中の自動車に搭乗していない場面についても費用補償

と、簡単に言うと、このようになります。

そして、事故に遭って、相手方や相手方の保険会社と交渉をしても納得のいく回答がもらえないときなどに、ご自身が加入している保険会社の同意のもと、相手方への損害賠償請求を弁護士に依頼することができるのです。

訴訟(裁判)にならない段階でも弁護士に依頼することができますし、最終的に訴訟(裁判)に至らないで解決することも現にあります。

弁護士費用特約を使うと、費用面でどのようなメリットがあるか?

弁護士費用特約が付加されている場合、多くの特約では、相談料としては最大10万円まで、弁護士費用総額としては最大300万円までが補償される内容になっています。

多くの交通事故案件では、弁護士費用がこの最大額を超えることはありません。最大額を超える場合には、賠償額自体がかなり大きくなっています。

弁護士費用の算出方法については、私にご依頼をいただく際には、しっかりと説明いたします(保険会社が費用を負担する形になりますが、依頼者と弁護士の間の契約でもあるためです)。

なお、弁護士費用特約を使っても、自動車保険の等級は下がりません。

弁護士費用特約を使ったほうがいいとき(交通事故編)

死亡・後遺障害・ケガなど、人的損害が発生した事故の場合

人的損害が発生しているときには、相手方保険会社の提示している額でいいのか、弁護士のアドバイスをもらう方が望ましいといえます。

弁護士の使い方としては、訴訟(裁判)をする場合はもちろん、紛争解決センターを利用したり、示談交渉を任せたりすることもできます。

保険会社から提示された賠償額にどこか疑問があるとき、その額が妥当適切か確認するために法律相談を受け、その後の対応を検討する、という利用方法もあると思います。

過失割合に争いがある場合

交通事故の当事者の間では、どちらに何割過失があるかということが問題になることがよくあります。

これを 過失割合 といいます。

過失割合については、裁判例の積み重ねなどから、事故類型ごとに基準が作られています(赤本、青本といった書籍があります)。

保険会社は、そうした裁判例や基準を念頭に提示をしてきますが、やはり相当程度、自車側に有利な見方をすることも多いです。

類型は用意されていますが、実際のところ、類型に当てはめてすぐ解決する事故ばかりではありません。

普段このようなことに馴染みのない交通事故被害者が交渉をしていくことは、相当難しいといえます。

このようなときにこそ弁護士に依頼した方がいいでしょう。

10対0で相手方が悪い事故(もらい事故)の場合

自車側にも過失がある場合については、相手への損害賠償をする必要があるので、自車側で加入している保険会社が相手方と交渉をする流れになります。

しかし、自車側に過失がない場合、自車側で加入している保険会社は相手方と交渉する根拠がありませんので、被害者が自ら相手方本人や相手方保険会社と交渉しなければならないことになってしまいます。

このようなとき、相手方本人や相手方保険会社から誠実な回答がなされなければ、自車側の保険会社から同意を得た上で、弁護士に依頼して、相手方と交渉してもらうことも手法の一つでしょう。

弁護士費用特約で依頼する弁護士は選べる?

誰に依頼するか選べます

弁護士費用特約を使った場合には、自分が加入した保険会社が選んだ弁護士をつけなければならないのでしょうか?

答えは、 No です。選べます。

保険会社によっては、特定の弁護士を紹介する会社もありますし、弁護士会(日弁連)を通じて名簿順に紹介してもらう会社もあります。

そうやって、知っている弁護士がいない人には、何らかの形で弁護士を紹介する制度はあります。

しかし、実際は、ご自分で探して、最も良いと思われた弁護士に依頼するということも可能です。

石川県、富山県、福井県の事件を重点的にお受けします

私は、石川県金沢市の事務所に勤める弁護士ですが、弁護士費用特約を使って弁護士に依頼したいという方には積極的にご対応いたします。

石川県内については金沢市周辺だけではなく、七尾市や小松市周辺の方の案件をお受けすることも多いですし、富山県西部(高岡市、小矢部市、砺波市、南砺市など)の案件をお受けすることもあります。福井県の方についても、交通事故・交通事故以外とも受任経験があります。

基本的には、相談は法律事務所で、ということになりますので、ある程度近くて相談しやすい弁護士がいいと思いますが、ご縁次第というところもあります。

弁護士費用特約を使って弁護士に依頼したいときには、まずは電話かメールで、私に連絡してみてください。

あの裁判官がついに…。楽しみすぎる本。

衝撃的な発売情報が…

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アフィリエイトではないです。

絶望の裁判所 [新書]

 

著者は…… 瀬木 比呂志 !!

裁判官室に必ずある『民事保全法』という分厚い本の著者です。

新日本法規サイトの経歴

以下は、amazonからの引用。

登録情報

  • 新書: 256ページ
  • 出版社: 講談社 (2014/2/19)

商品の説明

内容紹介

裁判所、裁判官という言葉から、あなたは、どんなイメージを思い浮かべられるのだろうか? ごく普通の一般市民であれば、おそらく、少し冷たいけれども公正、中立、廉直、優秀な裁判官、杓子定規で融通はきかないとしても、誠実で、筋は通すし、出世などにはこだわらない人々を考え、また、そのような裁判官によって行われる裁判についても、同様に、やや市民感覚とずれるところはあるにしても、おおむね正しく、信頼できるものであると考えているのではないだろうか?
しかし、残念ながら、おそらく、日本の裁判所と裁判官の実態は、そのようなものではない。前記のような国民、市民の期待に大筋応えられる裁判官は、今日ではむしろ少数派、マイノリティーとなっており、また、その割合も、少しずつ減少しつつあるからだ。そして、そのような少数派、良識派の裁判官が裁判所組織の上層部に昇ってイニシアティヴを発揮する可能性も、ほとんど全くない。近年、最高裁幹部による、裁判官の思想統制が徹底し、左派系裁判官は一掃され、リベラルな良識派まで排除されつつある。
三三年間裁判官を務め、学者として著名が著者が、知られざる、裁判所腐敗の実態を告発する。情実人事に権力闘争、思想統制、セクハラ・・・、もはや裁判所に正義を求めても、得られるものは「絶望」だけだ。

著者について

一九五四年名古屋市生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験に合格。一九七九年以降裁判官として東京地裁、最高裁等に勤務、アメリカ留学。並行して研究執筆や学会報告を行う。二〇一二年明治大学法科大学院専任教授に転身。民事訴訟法等の講義と関連の演習を担当。著書に、『民事訴訟の本質と諸相』、『民事保全法』(各日本評論社)等多数の専門書の外、関根牧彦の筆名による『内的転向論』(思想の科学社)、『心を求めて』(騒人社)『映画館の妖精』(同)、『対話としての読書』(判例タイムズ社)があり、文学、音楽(ロック、クラシック、ジャズ等)、映画、漫画については、専門分野に準じて詳しい。

ちょっと、ちょっと…。

いや、まぁ、昨年出版された新著についてのレビューが気になってはいたんだが。

なーんか、まぁ、面白いことになってきたというか。

今からわくわくします。今年、弁護士の間で、話題にされることの多い本になるのでは(裁判官は読んでも話題にしないかもしれません)。

保釈とは?

保釈とは?

前提知識

  • 起訴(公判請求)… 検察官(検事など)が裁判所に正式な刑事裁判を提起すること
  • 被告人 … 起訴(公判請求)された者 (なお、民事訴訟で訴えられた者は「被告」という)
  • 被疑者 … 捜査機関により、罪を犯したとの嫌疑を持たれている者
  • 逮捕 … 被疑者の逃亡や罪証隠滅を防止するため身体を拘束する処分(裁判所解説
  • 勾留 … 被疑者・被告人の逃亡や罪証隠滅を防止するため身体を拘束する処分 (裁判所解説

保釈とは?

対象は「勾留されている被告人」

逮捕から引き続き勾留されている被疑者は、その勾留中に起訴(公判請求)されて「被告人」の立場になった場合、基本的にそのまま勾留され続けます。

起訴後の勾留は、被告人が刑事裁判を受けるにあたって、証拠隠滅や逃亡を図るおそれがあるとして、それらを防止するためになされるものです。

しかし、証拠隠滅や逃亡を図るおそれがある(と裁判所が考えた)場合であっても、裁判の結論が出るまで身体拘束を受け続けなければならないのは過酷です。そこで、刑事訴訟法により、保釈保証金を納付して、被告人の身体を解放する制度が用意されています。これが保釈です。

※ なお、身体のことを「身柄」と書く場合がありますが、やや人間の尊厳に反する言い方のように思えますので、ここでは「身体」で統一します。

保釈が認められる場合、認められない場合

保釈は、お金が用意できるからといって、必ず認められるわけではありません。裁判所が、「被告人に保証金を納付させれば、逃亡や証拠隠滅を防止できる」と考えなければ、保釈の許可は得られません。

お金が用意できるかできないかは、保釈の可否の判断には関係がない、と言ってもいいくらいです。(ただ、お金が用意できなければ、保釈が認められても保証金の納付ができないから、そもそも保釈請求をしない傾向にある、ということはあります。)

保釈保証金の金額は、保釈を許可するときに、裁判所が裁判所の判断で決めます。この額は、疑われている犯罪の軽重、被告人の経済状態などさまざまな事情を考慮の上で決められます。あまり重くない罪であっても、150万円から200万円程度とされる場合が多いです。

裁判所は、まだ裁判が始まっていない被告人(第1回公判期日前)については、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるとして、保釈を認めない傾向にあります。第1回公判期日で被告人が罪を認めたようなときは、証拠を隠滅する可能性が大きく減る、と考えるわけです。

※最近、徳州会をめぐる刑事事件で、ある被告人が、被疑者段階の「勾留理由開示」の法廷で罪を認めるということがありました(参考記事)が、それから2週間足らず(第1回公判期日前)に保釈が認められました(参考記事)。本来は、「勾留理由開示」の手続は、罪を認めるということを言う場ではないのですが、この被告人(被疑者)の弁護人は、早期保釈を実現するため、公開の場を利用したのではないかと思われます。

弁護士(弁護人)の立場からすると、「認めれば出られる」・「認めなければずっと出られない」、という捜査機関のやり方(人質司法といわれます)を裁判所も踏襲しているように見えてあまり望ましい傾向とは思いませんが、現実の運用を踏まえて対処するのも弁護士の仕事としては重要です。

保釈保証金の貸付制度について

このような中、民間業者が、保釈保証金の貸付事業を始めました。大雑把にいえば、被告人の家族などが借り入れをして、そのお金を裁判所に納める、というわけです。また、そのような状況を憂慮して(対抗して?)、全国弁護士協同組合連合会が「保釈保証書発行事業」というものを始めました。

このような制度の利用にはリスクが伴うこともあります。特に、被告人本人以外があまりにも大きなリスクを負うことのないよう十分注意すべきです。

保釈と釈放の違い

最後に、よく混同されている「保釈」と「釈放」の違いについて、ご説明します。

保釈とは(おさらい)

保釈については、ここまで述べたとおりです。起訴後に勾留されている被告人について、裁判所が保釈保証金の納付と引き換えに身体解放することをいいます。

釈放とは

これに対し、釈放は、身体解放を総称した呼び方です。

特に、検察や警察といった捜査機関が被疑者の身体を解放することを釈放と呼ぶことが多いです。たとえば、逮捕や被疑者勾留のあと、処分を決めないで身体解放することを、「処分保留で釈放」と表現します。

ですから、釈放となり、家に帰れることになっても、それだけで罪に問われないということを意味しません。釈放は、あくまで、身体が解放される、ということだけを指すからです。

家庭裁判所の調停で注意すべきこと

どんなときに家庭裁判所で調停をするか?

家庭裁判所で調停(家事調停)をするのはどのようなときでしょうか?

これは、一言でいえば、「家族関係・血縁関係についての話し合いをするとき」です。

夫婦間の話し合い

まず、多いのは、夫婦間の話し合いです。

夫婦間の話し合いの項目としては、離婚をするか否かについて、子の監護養育について、養育費について、婚姻費用について、親権者について、財産分与について、などがあります。

離婚が絡む場合は、離婚した後の話もしますし、離婚するまでの間についての話もします。

相続人同士での話し合い

次に多いのは、相続人同士での話し合いです。

誰かが亡くなったときには、誰がどのように財産を相続するか、遺産相続(遺産分割)の話をしなければなりませんが、その話し合いがまとまらないことがあります。

そのようなときは、家庭裁判所で、調停を開き、話し合いをすることになります。

それ以外の調停

それ以外にも、子どもの認知、親子関係の不存在確認、夫婦円満などの調停があります。

誰が調停に参加するか?

  • 申立人(話し合いをしたいと言っている側)
  • 相手方(話し合いの相手)

申立人・相手方とも、1人でもいいですし、複数でもかまいません。ただし、裁判所の手続費用は増加します。このほか、「利害関係人」といって、紛争に関係すると思われる人が参加する場合もあります。

よく、離婚の話では、親御さんが当事者の代わりに話をしたがることがありますが、裁判所の手続上は、当事者本人(または付き添っている弁護士)が意思を述べるのが大原則になります。よって、事情にもよりますが、多くの場合は、親御さんの関与は待合室のご同行までです。

話し合いはどのように行われるか?

別席調停が多い

事案の種類にもよりますが、調停に持ち込まれる事案は、争いがあって同席をすることが難しい場合が多いので、別席調停となることがほとんどです。

ただし、平成25年から始まった家事事件手続法の運用では、基本的に同席でするとされている事柄もあります。東京家裁は、つぎのとおり説明しています。

調停期日の始めと終わりに,双方当事者本人が調停室に立ち会った上で,裁判所から,手続の説明,進行予定や次回までの課題の確認等を,また,成立・不成立等により事件が終了する際の意思確認を行います。これは,家事法制定の趣旨の一つである,調停手続の透明性の確保の観点から,主体的な合意形成の前提となる,手続の進行状況や対立点,他の当事者が提出した資料の内容等について,両当事者と裁判所が共通の認識を持つための取り組みです。手続代理人が選任されている場合でも,出頭した本人に手続等の内容を理解して頂くために,代理人のみではなく,双方当事者本人に立ち会ってもらい確認,説明を行います。
ドメスティック・バイオレンス(精神的暴力,性的暴力も含みます。)等の問題が窺われる等により立ち会うことに具体的な支障がある場合は実施しませんので,そのような場合には,「進行に関する照会回答書」(2の書面)に具体的な事情を記載してください。また,一律,硬直的な扱いではなく,事案等に応じて柔軟に実施してまいりますので,ご協力をお願い申し上げます。

要するに、調停期日の各回において、始まりと終わりに、当事者全員が立ち会って、いろいろなことを確認します、ということです。

ただ、当事者のいずれかが難色を示した場合は同席させないで説明・確認をする場合も多いと思われます(平成25年以降、金沢家裁で私が関わった事件では、同席確認をしなかったことのほうが多いです)。

別席調停の方法

さて、別席調停の仕方ですが、多くの場合、申立人と相手方が30分程度ずつ交互に調停室に入り、調停委員2名(男女)と話をします。調停委員は、聞き取った話を元に、着地点を探ります。双方当事者が、調停室への出入りを繰り返す中で、調停委員と話をして、対立当事者との歩み寄りを模索するわけです。

多くの場合、1回の期日は2~3時間となります。その日に話し合いがまとまらなければ、次の日程を決めて、その日はおしまいになります。

どのような方が調停委員になっているのか、どんな形で調停が進むのかについては、NPO法人シニアわーくすRyoma21の上平慶一氏のエッセイを参考になさるとよいでしょう。

成立と不成立

何らかの形で話し合いがまとまった場合には、調停調書に、決まったことを書き記します。これを調停の「成立」といいます。

調停は、話し合いですので、話し合いが全くまとまりそうになかったり、どちらか一方がもう話し合いをしないと宣言すれば、「不成立」ということで、終わってしまいます。

不成立の場合には、そのまま終わってしまうものもありますが、事案によっては、「審判」の手続に自動的に移行します。

このほか、申立人が調停を取り下げた場合には、そこで調停は終わります。

調停で注意すべきこと

調停は、訴訟に比べれば、一般人でも申し立てやすい手続です。しかし、実は、弁護士でも一筋縄ではいかないことの多い手続です。

家事調停に臨むにあたって、どの場合でも注意すべきことを以下に書き出してみました。このほかにも、個々の事案ごとに、注意すべき事柄はあると思われます。

対立当事者が何を言っているのか正確に把握すること

別席調停では、調停委員を介しての話し合いにならざるを得ません。調停委員は、学識・経験を認められて裁判所から選ばれているのですから、基本的には信頼でき、対立当事者(申立人←→相手方)の言っていることをおおむね正確に伝えてようとしてくれていると思っていいのですが、それでも不正確な点が含まれることもあります。

調停委員は、和解を模索する役目がありますので、双方への伝え方を工夫されています。その中で、やんわり伝えようとしたり、調停委員なりの提案を付け加えようとしたりする中で、正確性が失われやすいと思われます。

よって、対立当事者の言っていることが正確に表現されていないのではないかと思ったら、率直に指摘して、再確認をしてもらったほうがよいです。

調停は口頭で進みますので、ボタンの掛け違いが起こったら、時間を浪費してしまいますし、合意できないような状況になってしまうこともありますので…。

不成立になった場合にどうなるかを常に考えること

調停は「話し合い」ですから、双方がYesと言ったことだけが調停調書の中身になるわけです。

しかし、だからといって、「自分の気に入らないことは全部Noだ」と言っていると、のちのち大変なことになる場合があります。

「調停で決まらないときには審判で決めなければならない」と法律上決められている事項について、調停が不成立になったら、誰かが「No」だと言っていても、家庭裁判所が審判をして決めてしまうことがあります。たとえば、結婚していながら別居しているときの婚姻費用であるとか、遺産分割がまとまらないときであるとかは、自動的に審判に移行します。

家庭裁判所の審判の内容は、調停で話し合いのされていたこととは原則無関係です。調停で話し合いが進んでいた内容とは全く異なる、意外な内容の審判が出されることもじゅうぶんありえます。

家庭裁判所が審判をすると、基本的にはそれに従わなければならなくなります。そうなってから「また調停に戻してほしい」と言っても、もう遅いということになります。即時抗告などの異議申し立ての手段もありますが、弁護士でも苦心する手続です。

ですから、もし調停が不成立になったらどういう展開になるか、ということを常に考えるべきだということになります。

調停調書の内容にこだわること

家庭裁判所の書記官は、最終的に調停での約束内容を記した書面を作ります。これを「調停調書」といいます。

調停調書の効力は、大きいものがあります。

たとえば、「AがBに毎月○○円支払う」という内容の調書になっていたときに、もしAがその額の支払いをしなければ、Bは家庭裁判所に申し立てて強制執行の手続をとることができます。

一般的な話し合い(裁判所での調停ではない)で上記のような支払い約束がされていても、すぐには強制執行をすることはできませんから、調停調書は強力です。

逆に言うと、調停の話し合いの中で「案」として出されていても、調停調書に書かれていなければ、「調停上の約束」ではないのです。

後日、「あのときの調停で、そういう話になったはずです。調停調書に書いてないのがおかしいのです。調停委員に聞いたり、調停委員のつけていたメモを見ればわかります」と言っても、手続上、調停調書ができあがるときに当事者みんなが内容をしっかり確認したことになっているのですから、難しいのです。

また、調停調書の文言(調停条項)の書き方によって、上記のような執行力(不履行の時に強制執行できる効力)をもつ場合ともたない場合に分かれます。

ですから、話し合いがまとまる方向で進んで、最後、調停調書を作るということになったら、内容にはこだわるべきですし、細かな言葉遣いにも注意を払うべきだということになります。

まとめ

  • 家事調停は、別席調停が多い。
  • 相手の主張、調停委員の提案など、正しく確認するよう努めたい。
  • 調停不成立の場合、審判に移行するかどうかを押さえておくべきである。
  • 調書の調停条項の書き方には細心の注意を払うべきである。

養育費・婚姻費用「算定表」とは何か?

婚姻費用・養育費のおさらい

今回は,全国の家庭裁判所で用いられている,婚姻費用と養育費の算定表についてご説明します。

まず,その前に,婚姻費用と養育費についておさらいします。

婚姻費用とは?

婚姻費用とは,結婚している夫婦について,対等の社会生活を維持するために必要な費用のことをいいます。

婚姻費用の中には,子どもの養育にかかるお金も含まれるため,結婚している間は,通常,子どもにかかる費用も含めて,婚姻費用の問題として解決します

別居をしている夫婦でも,離婚が決まるまでは,婚姻費用が発生します

法律的には,「夫婦合わせてかかるお金をどう分担するのか?」という考え方をします。このことを,婚姻費用の分担といいます。

より詳しく知りたい方は,私が婚姻費用について解説したブログを見てください。

養育費とは?

養育費とは,未成年者の子どもを監護養育している親が,監護養育していない親に対し請求することができる,子どもの監護養育のための費用です。

上で書いたように,結婚中も当然子どもを育てなければいけませんが,結婚中は婚姻費用として問題が処理されます。よって,養育費(だけ)の問題として浮上するのは離婚後です

裁判所では,養育費についても,婚姻費用と同じような考え方によって定められています。要するに,親同士の収入の差によって,養育費の額が大きく増減するというわけです

この考え方をより詳しく知りたい方は,私が養育費について解説したブログを見てください。

養育費・婚姻費用算定表とは何か?

養育費・婚姻費用算定表はどこで見ることができるか

養育費・婚姻費用算定表とは,これまで養育費・婚姻費用について説明した考え方をもとに,夫婦(元夫婦)の年収を当てはめたときに,養育費・婚姻費用がおよそ何円になるか,見やすくした表です。

裁判所(東京家庭裁判所)のホームページにも掲載されています。左のリンクをクリックしていただくと,裁判所のページが表示され,実際に使われている養育費・婚姻費用算定表を見ることができます

また,多くの法律事務所(弁護士の事務所)や各地の裁判所,法テラスなどにも,参照できるように置いてあることが多いです。

裁判所では算定表が重視されている

この算定表(及び算定表の元になる考え方)は,東京・大阪の裁判官が研究会を開いて作り上げたものであり,東京家裁・大阪家裁だけではなく,全国の家庭裁判所がこれを参考にしています

養育費・婚姻費用が訴訟や家事審判で決まる場合には,裁判官や家事審判官がこの算定表に重きを置いて額を決定することが非常に多くなっています

養育費・婚姻費用が家事調停で決まる場合にも,多くの弁護士や調停委員は,この算定表を参考にします。弁護士や調停委員には,この算定表に対して賛成意見と反対意見がありますが,裁判所が重視している算定表ですので,無視できないのが実情です。

なお,この算定表は,最大で子どもが3人のケースまでしか掲載されていませんが,子どもが4人以上いても,算定表の考え方を元に計算することが可能です。

算定表の額は絶対なのか?

よく,夫婦(元夫婦)の片方又は両方から,「自分たち夫婦(元夫婦)の場合,算定表のままではおかしいと思います。○○の事情があるからです。」といった意見が出ることがあります。

算定表は,あくまで統計を元に,標準的なケースで妥当する額を示していますので,そのような意見が出ることは当然だと思います。

しかし,裁判所の裁判官の多くは,この算定表は,「それぞれの夫婦には事情があり,完全に標準的なケースなどはない」という前提で,額の幅を持たせて作られているのだから,あまりに特別な事情がない限りは,額の幅のうちの最大限・最小限をとることで済む,と考えているように思います。これは,私が,何件も,養育費・婚姻費用の算定についての争いを扱った上で感じていることです。

一方の弁護士が増額方向での事情を挙げれば,もう一方の弁護士が減額方向での事情を挙げる……。そんなケースも多いなかで,裁判所は,基本的には算定表を基本に置きつつ,夫婦双方の事情を踏まえて額を決めていると思われます。

ですから,弁護士が付いたというだけで,大幅に額が増減するというものではありません。やはり,基本となるのは,夫婦(元夫婦)の収入額や夫婦ごとの事情です。しかし,養育費や婚姻費用の問題を抱えた方が裁判所や相手方に対し,適切なタイミングで適切な主張をするためには,養育費・婚姻費用について,裁判所の実務を理解している弁護士に依頼・相談するということは重要であるといえます。

特定秘密保護法は便利な捜査ツールか?

特定秘密保護法の成立

特定秘密保護法は、去る国会で成立した。

法案の国会提出後、マスコミも含め、反対論が膨らんだが、自民党・公明党の法案成立への意思は揺るがず、結局成立した。

ただ、成立以降も、法律の運用について懸念の声が少なくなく、まだマスコミの報道もやんでいない。

私の、特定秘密保護法への、もともとのスタンス

私は、特定秘密保護法の立法の目的については、否定しない。大雑把に言って、高度な外交秘密や安全保障上の秘密を他国に漏らさないための法制度は必要だと思う。

特に、現在、東アジア情勢は一筋縄ではいかない状況である。対中・対韓の関係については、表面的に友好化すればいいというものではなく、常に注意を払わなければならない。そのような中、情報漏洩を防ぐ手立てを講じる必要はある。

本来的には、国民は、安全保障に関しても、多様な情報を知った上で議論し、輿論を形成し、選挙権を行使すべきである。しかし、すべてガラス張りで議論することで、国民主権の足場が崩れることもある。そうであるならば、秘密とする情報の範囲はできるだけ抑制的であることが望ましいが、秘密を保護する法律を制定すること自体否定されるべきではない。

強く残る懸念(捜査機関にとって便利なツールであるといえること)

特定秘密保護法案に関する議論の当初、私は賛否を決めかねていたが、その理由としては、刑事罰に関する構成要件が曖昧であったり、刑事手続と「秘密」との関係がはっきりしない点があった。

日本の現実として、捜査機関が被疑者を逮捕・勾留すると、マスコミは疑いの内容を警察(検察)発表どおりに実名を付して報じ、それを受けて社会はおおむね被疑者を犯人視する。特に、捜査機関が力を入れている事件については、どのように報じられるかを意識して情報をリークすることで、輿論を味方につけ、捜査段階から被疑者に社会的制裁を与えようとする。

こういうことになっているから、捜査機関がある人物を立件したいというときに、いかなる理由をつけて(いかなる罪名を適用して)立件できるかが非常に重要なのである。今回の、特定秘密保護法(案)は、構成要件が曖昧であり、読み方にブレが生じるゆえに、捜査機関は法律を広く解釈して被疑者の逮捕・勾留を裁判所に請求し、裁判所もあっさりと認めるのではないかという懸念がある。

このあたりのことを漠然と考えていたが、落合洋司弁護士の稿(弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」 2013/12/02 国家機密と刑事訴訟 特定秘密保護法案の刑事手続上の論点)を読んで、「特定秘密保護法違反」の刑事事件を想定したときの問題点がさらにはっきりわかった。私が上に書いたように、「特定秘密保護法違反」として被疑者を逮捕・勾留することもありうるだろうし、大まかに「特定秘密保護法違反」の被疑事実があるからとマスコミその他の関係先を捜索するということも十分考えられる。そして、刑事手続が進む中でも、捜査機関側は、外形的に「特定秘密」にあたることに関わった何らかの証拠を裁判所に提出するかもしれないが、その提出証拠は、捜査機関に都合の悪い部分を隠したものであることもありうる(そのような操作が簡単にできるだろう)。

もちろん、私は、秘密漏洩を食い止めるため、罰するべき事案もあることは認める立場である。しかし、行政機関には、「行政側から睨まれてでもやる」という人物を排除したいという欲求があり、そうした人物の行為が公益に資するか否かは、当事者の行政では究極的判断ができないのでないかと思う。そういうとき、行政がそうした人物を邪魔だと思い、そうした人物が関わった情報が「特定秘密」に属するものであれば、「特定秘密保護法違反」として逮捕、ということにも直結しうる。このような場合、行為をした本人以外の者も共犯者(の疑いがある者)として逮捕されることもある。逮捕までいかずとも、非常なプレッシャーをかけられる。

郷原信郎弁護士も、次のように指摘し、この法律が誤った方向で用いられるおそれがあるとする(郷原信郎が斬る 2013/12/05「特定秘密保護法 刑事司法は濫用を抑制する機能を果たせるのか」)。

特定秘密保護法案に関して問題なのは、法案の中身自体というより、むしろ、現行の刑事司法の運用の下で、このような法律が成立し、誤った方向に濫用された場合に、司法の力でそれを抑制することが期待できないということである。

他方、長谷部恭男東京大学教授(憲法学)は、衆議院国家安全特別委員会で、参考人として話をしたが、このあたりの問題については、次のとおり述べている(引用元サイト)。

それから第四、それでもこの法案の罰則規定には当たらないはずの行為に関しましても、例えば捜査当局がこの法案の罰則規定違反の疑いで逮捕や捜索を行う危険性、それはあるのではないかと言われることがございます。我が国の刑事手法、ご案内の通り捜索や逮捕につきましては令状主義を取っておりまして、令状とるには罪を犯したと考えられる相当の理由ですとか、捜索の必要性、これを示す必要がございますので、そうした危険が早々あるとは私は考えておりませんが、もちろん中には大変な悪だくみをする捜査官がいて、悪知恵を働かせて逮捕や捜索をするという可能性はないとは言い切れません。

ただあの、そうした捜査官は、実はどんな法律であっても悪用するでございましょうから、そうした捜査官が出現する可能性が否定できないということは、正にこの法案を取り上げて批判する根拠にはやはりならないのではないかと。むしろそうした捜査官が仮に出現するのでありましたら、そうした人たちにいかに対処するのかと。その問題にむしろ注意を向けるべきではないかと考えております。

この長谷部教授の発言は、落合氏・郷原氏の議論に直接対応するものではない。長谷部教授の問題設定は「この法律が悪用されないか?」というものであり、巧妙に「活用」されるという問題についての議論ではないからだ。

ここで、長谷部教授は、こういうことを言っている。「逮捕」や「捜索」については令状主義をとっているから、必ず裁判官のチェックを受けるのである。罰則規定にあたらないはずの行為を取り上げて逮捕や捜索を受ける可能性は、他の法律による場合と同様、捜査官の個性の問題になる、と。

しかし、実際には、裁判官の令状審査が実質的に機能しているか疑問が大きい。令状主義をとっていることだけで、捜査機関がこの法律を巧妙に「活用」することは、防げないだろう。

以上から、私は、最終的に、特定秘密保護法案に反対する意見を持ったし、現在でも特定秘密保護法がどのように運用されていくか、強い懸念を持っている。実質的に、安全保障のためという目的をそこそこにして、捜査機関の便利ツールとして使われていく可能性があると思っている。

この法律の運用については、今後とも注目していきたい。

有罪に導く検察官の供述調書ライティング技術

八田隆氏のブログから

所得税法違反の罪に問われ東京地検特捜部により起訴された八田隆氏(元クレディ・スイス証券勤務)のブログに、検察官がどのように取り調べをし、供述調書の作成をしようとしたか、書かれています。

検察特捜部の取調べが始まる前に、主任弁護人の小松正和弁護士に説明されたのは、調書における符牒でした。通常、調書は一人称で書かれます。第三者の検察官が作成しながら、文章は「私は」で始まる文体になっています。しかし、検察官が「この被疑者は嘘をついているな」と思われる部分は問答形式になります。

一人称の文章の中に突然、
検察官「~ではないのですか」
被疑者「いえ、それは~です」
という問答形式の会話が挿入されます。これが検察官による符牒です。

私はそれを聞いていたため、案の定、検察官がそのような問答形式の文章をはさんで検面調書を作成し始めた時に、徹底的に抵抗しました。

かなりの長時間、検面調書の様式に関し怒鳴り合いが続き、その中では「どうして我々が怪しいと思っていることを裁判官に伝えることがいけないんだ!」という検察官の言葉もありました。

結局、根負けした検察官の選択は、裁判官も見たことがないであろう、全て問答形式の調書でした。小松弁護士の事前の情報インプットがなければ、そうした調書は生まれなかったものです。

#検察なう (352) 「起訴前弁護の重要性」 12/5/2013

問答形式は常套手段

八田氏の場合

このように、東京地検特捜部の検事は、八田氏の供述調書に問答形式を入れ込もうとしたようです。

このやり方が特捜部独特のものかというと、決してそんなことはありません。

各都道府県にある検察庁(地検)の検事は、同じように問答形式の調書を作ることがありますし、各都道府県の警察官も問答形式の調書を作ることがあります。

八田氏の調書は、弁護人のアドバイスを受けて捜査に対応した結果、すべて問答形式で統一されているという、かなり珍しい調書になったようですが、本来検察官や警察官が目指す調書はそのようなものではありません。八田氏は、弁護人の好プレイにより、致命的な供述調書をとられることを防いだといえます。

供述調書の役割

検察官(警察官にも同じことが言えますが、以下では「検察官」と書きます)は、検察官自身の書面として「供述調書(供述録取書ともいいます)」を作成します。供述調書は、検察官が自分の名前で作る書面。まずは、これが重要ですから、押さえておいて下さい。

通常、被疑者(被告人)が犯行を認めているようなときには、被疑者が話したことを検察官が再構成して、あたかも被疑者が一本のストーリーをすらすらと語っているようにして、検察官が調書を書きます(これを「物語形式」といいます)。そして、内容を被疑者に読み聞かせ、そのように供述したことで間違いないということを確認させた上で、被疑者に署名・押印(指印)してもらい、最後に検察官が署名押印して一丁上がりです。

大雑把に言えば、こうやってできあがった調書は、被疑者(被告人)が裁判所において自分の口で話すことと同じくらい、いや、それ以上に重視される傾向にあります。

検察官が再構成していることもあり、検察官が裁判所に提出する他の証拠(関係者や被害者の証言等や物証等)と一致し、論理的で筋が通っていて、読みやすいものになっているのです。

被疑者(被告人)が検察の見立てに乗らない場合

被疑者(被告人)が否認しているときには、検察官は、できるだけ有罪にもちこめるような証拠を作るため、供述調書を一工夫します。

まず、争っていない部分については、通常通り「物語形式」で調書を作成します。他の部分では文句があるかもしれないけど、ここは文句がないだろう、というわけです。

そして、争っている部分については、「問答形式」を使います。八田氏がブログで書いている形式です。

たとえば、

検察官「あなたは、そのとき、○○にいたのか。」

被疑者「そのときそこにはいませんでした。そこには行った記憶がありません。」

検察官「では、あなたの指紋と酷似した指紋が○○の食器から見つかったのは、なぜか。」

被疑者「私にはわかりません。」

というような感じです。

怪しいのに認めていない、これだけ不利な証拠があるのによくわからない弁解をしている、ということを読み手(裁判官)に印象づける手段です。

検察官は、この「問答形式」の部分について、被疑者が難色を示すと、たとえば、「あなたが答えたとおり書いているではないか、しゃべったことと書かれていることが違っているというなら、言うとおり直すから、指摘しろ」というようなことを言います。そして、この問答も含めて、被疑者が語ったこととして、調書を作ろうとします。

「部分的な問答形式」の落とし穴

そうやって、被疑者は、一応は自分の言い分も書いてもらったから、ちょっと不本意だけれども署名・押印するしかないか、ということで、応じがちです。

しかし、特に複雑な事件の場合によく言えることですが、検察官が被疑者に見せていない証拠の中に被疑者の弁解と一見矛盾するものがあったり、他の調書でサラッと書かれていることが被疑者の弁解と矛盾するようになっていたりすることがあります。

また、はっきり矛盾していなくても、いかにも怪しい点として、「問答形式」の部分が浮かび上がるようになっており、裁判になってからその部分だけ争っても、その調書をもとに、全体的に検察官のストーリーに信用性が認められる、という効果をもたらしがちです。

このほかにもいろいろある

検察官は、裁判官に有罪判決を書かせる、すなわち被疑者・被告人を有罪に導く技術をこのほかにもたくさん持っています。

たとえば、一旦できあがった調書を読み聞かせたときに、被疑者が「内容があまりにおかしい、直してくれ」と申し出たとします。検察官は、被疑者が指摘した点について調書を書き足して訂正します。しかし、検察官は、それに応じた上で、裁判になったときに、その調書の他の部分について被疑者・被告人が争うと、「訂正してほしい、という部分は訂正したのだから、その他の部分は間違いないとはっきり認めた、ということだ」と主張することがあります。

被疑者としては、元の調書よりはマシになったと思って署名押印したつもりでも、裁判になると、それを逆手に取られる、ということです。

こういうやり方は、必要な手段という側面もあるのでしょう。しかし、検察官にいろいろな手法を駆使された結果、本来は有罪といえるか非常に微妙であるのに、巧妙・強引に有罪に持ち込まれたというケースもあるように思います。

特に、八田氏の場合には、逮捕されずに在宅起訴でしたが、逮捕勾留されている中で取り調べを受ける心理は、相当厳しいものがあります。初めて逮捕されるような人が、そのような状況で、警察官・検察官の取り調べに1人で対応できるわけがないと思います。

弁護士は、検察官と違い、基本的には個々で活動しているので、いろいろな事件における経験をまるっと共有するわけにはいきません。ただ、その分、自分の経験から推し量って考えたり、他の弁護士の経験を知る機会があればどんどんと学び取っていかなければならないと思います。

養育費とは何か?

養育費とは

婚姻費用に引き続き,養育費についてです。

未成年者の子どもを監護養育していない親は,監護養育している親に対し,子どもの監護養育のための費用(養育費)を分担する義務があります(民法766条3項)。

養育費の支払いが問題になるのは,主に離婚後です。

婚姻中に別居しているときにも理論上は養育費を請求できますが,婚姻中の婚姻費用には配偶者の生活費と子どもの養育費の両方が含まれているので,まだ結婚している状態のときは,ふつうは婚姻費用という名目で請求します。

婚姻費用と同じく,養育費についても,「生活保持義務」(自分の生活を保持するのと同程度の生活を保持させる義務)の考え方があてはまりますので,配偶者が特段困窮していないような状況でも,同程度の生活になるように支払わなければならないのです。

逆に言えば,法律的な考え方からすれば,子どもを監護しない親が,子どもを監護する親に対して,子どもを監護するための費用の全額を支払わなければならない,ということもありません。あくまで,子どもを監護する親と子どもを監護しない親の負担の調整をするものだということです。

養育費はいつまで支払うべきなのか?

裁判所の原則論・一般論としては,成人(現在は20歳)に達した者は自分で生計を立てるのが原則であり,子どもが成人に達した後は,「生活保持義務」の考え方に基づく扶養義務はなくなります。

しかし,現実的には,子どもが大学などに通えば,卒業するまでは自分で生計を立てることが困難であるのが通常です。

そういうことが見込まれる場合には,調停などの話し合いで,双方合意のもと,「22歳まで」などと定めることがあります。ただ,双方が合意しない場合には,裁判官(家事審判官)が審判で決めることになります。そうなると,原則論で,「成人まで」と決める裁判官も多いと思われます。

公的扶助(児童手当や児童扶養手当など)との関係

子どもを監護養育する親が,児童手当(旧名:子ども手当)や児童扶養手当(通称:母子手当)を受給している場合,相手親の感情論としては,養育費として決まった額から手当分を差し引かせてほしい,ということになりやすいですが,法律的にはそのようなことはできませんし,「手当をもらっているから養育費を減額してほしい」と養育費の決め直しを申し立てても,それを理由としては減額にならないと思われます。

ただし,養育費をもらっているのに,もらっていないと申告して行政から手当を受け取るのは,違法です。

家庭裁判所における養育費の算定方法

家庭裁判所においては,養育費についても,計算式を用意しています。計算式の考え方は,次のとおりです。

  1. 子どもが,実際とは違い,養育費支払義務親のほうと同居していると仮定して,義務親と同等の生活をするために生活費がいくらかかるか算定する
  2. 1」で算出された子どもの生活費を,双方の収入に応じて按分する

婚姻費用と同じく,ここでいう「収入」とは,税込収入から「公租公課(税金などのことです)」・「職業費(仕事用の被服費・交通費などです)」・「特別経費(住居関係費・保健医療費などです)」を控除した金額のことをいい,これを「基礎収入」と呼びます。この基礎収入について,裁判所は,個別事情に応じて計算するわけではなく,統計データから推計して,給与所得者の場合は総収入の約34~42%を基礎収入であると考え,自営業者の場合は総収入の約47~52%を基礎収入であると考えています。

また,婚姻費用と同じく,裁判所で使っている計算式では,夫と妻は生活費の指数が10015歳~19歳の子は生活費の指数が90(成人の90%)。0~14歳の子は生活費の指数が55(成人の55%)。この割合の生活費で,同等の生活といえると考えて計算しています。

計算式は絶対なのか?

婚姻費用と同じように,計算式で機械的に決められることに納得がいかない,実際はこうではない,と思われる方も多いのではないかと思います。

裁判所外で約束する場合には,計算式や算定表を絶対視しなくてもよいでしょう。また,裁判所でも,調停であれば,双方合意のもと,計算式や算定表を離れた金額設定をすることも可能です。

しかし,一方は「算定表のとおりの額であるべきだ」,もう一方は「算定表の額は高すぎる(または安すぎる)」と主張し続けるなどして,話が決着しないときには,家庭裁判所の裁判官(家事審判官)が審判で決めることになります。

そうなったときの多くの裁判官の考え方としては,「事案ごとにバリエーションがあることを前提に計算式・算定表は作られているのであり,計算式・算定表の考え方が通用しないような特段の事情がなければ,計算式・算定表によって算出された範囲内で決めよう」というものだろうと,私は思っています。

刑事事件(逮捕時点)の報道・ニュースについて

石川県で弁護士をしていると・・・

石川県で弁護士として活動し、そのなかで刑事弁護をしていると、自分の扱っている事件の被疑者(マスコミ用語では容疑者)・被告人(マスコミ用語では被告)について、地元マスコミがニュース報道するということが頻繁にあります。

いや、正確に言えば、自分の扱っている事件が報道されるというよりは、報道された事件を担当することになる場合が多いです。

報道されるタイミングというのは、一律ではありませんが、多くの場合、逮捕の翌日に、「○○署は、~~の容疑で、○○○○容疑者を逮捕した。○○容疑者は、容疑を認めている。」というような形で実名報道されます。

石川県の場合、ごく軽微な事案でも「逮捕」ということになれば、各警察署の幹部が各マスコミに対し、被逮捕者の住所・氏名・年齢・職業等を発表し、被疑罪名や事案の概要、否認か自白か、といったことも伝達します。

各マスコミは、ほとんどの場合、この警察発表を元に報道をするわけです。特に、地元紙である北國新聞と北陸中日新聞は、逮捕の被疑事実がごく軽微な事案だからといって、ふるい落としたり匿名にしたりすることもなく、ほぼ自動的に警察発表どおり掲載する傾向にあります。中には、紙面編集の都合なのか、警察発表されないケースもあるのか、逮捕されていても載らないものもありますが…。基準ははっきりしませんし、逮捕直後に載らなくても後日載ることがあります。

一般論として、刑事事件報道について

一般論として、まだ有罪と決まったわけではない人の実名を報道することにどんな意味があるのでしょうか?

まず、指摘されるべきは、報道された人は、自白・否認にかかわらず、記事の読み手の大半から犯人視されてしまうということです。ローカル紙のように、特定地域の住民の多くが読んでいる媒体に掲載されると、報道された人は行く先々で「犯人」として見られてしまうことになり、非常にダメージが大きいのです。

その一方で、逮捕しても警察が発表しない、マスコミも報道しないという状態になると、一般市民によるチェック機能が働きにくくなる、という側面もあります。確かに、警察が発表もせず、マスコミが情報を取得できないということになると、警察が逮捕すべきではない人を逮捕しても一般市民はそれを全然知らない、ということになってしまうかもしれません。

また、率直に言って、誰がどういった疑いで逮捕されたのかは、周辺住民が身を守るために必要な情報だ、という意見もありうるでしょう。

そのあたりは、結局はバランスの問題であると思います。どのような報道の仕方が適切か、いろいろと意見がありうるところでしょう。

しかし、刑事弁護もする弁護士の立場で、重ねて指摘したいのは、事案によっては、報道された人が受ける不利益(社会生活を取り戻すことの困難)が大きくなりすぎることがあるということです。

インターネットの問題

近年は、インターネットが一般化したので、昔と比べると状況が変化してきたものと思われます(といっても、私はインターネット時代以降の弁護士ですが)。

まず、インターネットに情報が掲載されればどこに住んでいても情報にアクセスできるということがあります。非常にローカルな、小さい事件でも、ニュースサイトに載れば、見つけて読む人は必ずいます(私などでも、遠い地方の新聞サイトや放送局のサイトをチェックすることがしばしばあるくらいなので、地元民ならさらに頻繁にチェックするでしょう)。

次に、インターネットに掲載されている情報は、サーバーから除去しない限り、常に”そこ”にある、ということを特筆すべきです。そうなっていると、検索でヒットすることにより、常に瞬時にアクセスできます。これは、通常、数日経てば古新聞として処分される新聞とは大きく違います。

さらに、物珍しい事件などは、全国ニュースで取り上げられるなどし、2chなどの掲示板にその事件を題材にした書き込みが相当なされることもあります。そこから、まとめサイトに転載されたり、ウェブ魚拓を取られるなどして、情報が氾濫状態になることがあります。

マスコミは影響力を自覚して・・・

各都道府県の地元マスコミの報道の仕方について、私は網羅的に知っているわけではありませんが、どうしても都市部のマスコミは、逮捕案件を全部掲載することには無理がありますので、何らかの基準で絞りをかけていることになります。

逮捕されたということが新聞掲載されれば、それだけで社会復帰が相当険しくなるので、本来であれば、田舎のマスコミも、事案の軽重などで掲載を選択したり、場合によっては匿名にすべきではないかと思います。

また、重大でない、しかしちょっと変わった事件を面白半分でインターネットに掲載することは、報道された当人にはあまりにも過大な社会的制裁になりうることもあります。

罪を犯した人にとっては、刑罰を受けることにも比肩するダメージを、報道されることにより受ける場合も多いように感じられます。こういうこと(報道が与える影響の大きさ)を報道側も自覚することで、罪を犯した人の社会復帰の道筋づくりにも関心が出て、よりよき社会づくりにもつながっていく、そんな気がします。