相談初期の見立て,その前に…

「見立て」の前提となる事実とは?

相談を聞いた段階で,私(弁護士)は見立てをします。

その見立てというのは,実は,「(相談者が言っていることが真実ならば,)この事案は法律的にどう扱われていくべきか?」という見立てだけではないわけです。

見立てをするときには,必ず「相談者の発言は私に相談者の実体験をありのままに伝えているか?(私に伝わっているか?)」ということを考えなければならないわけです。

 

「語り」が内包する危険

刑事訴訟法の勉強をしていると,供述証拠が内包する危険について説明がなされますが,法律相談もそれと同じことが言えると思います。

語りによる相談は,次のような危険をはらんでいるのです。

知覚過程での 「見間違い」・「聞き間違い」

記憶過程での 「思い込みによる記憶の変容」

表現過程での 「いつわり」・「誇張」・「隠蔽」

叙述過程での 「言い間違い」・「言葉の選び方の誤り」

わざと嘘をつこうとしなくても,ほぼ必ずこうした誤りを含んでしまいます。私が誰かに話をする場合だってそうです。

そして,聞き手側でも,「聞き間違い」・「聞いた言葉の解釈の誤り」・「聞いた記憶内容の変化や消滅」などがあるわけです。たとえば,聞き手側が,相談者の話を聞いて,「あ,それはこういうことですね。○○○○」と言い直したようなとき,相談者は,(うーん,ちょっと違うんだけど,大きくは違わないし,自分に有利な言い方だから,いいか)と思って,「そうです!」と返事をしてしまう。こんなことはよくあることです。

こういうふうなわけで,法律解釈を示す前に,何があったのかを正確に把握すること自体,綱渡りな作業です。

事案・相談によっては,重要な書面が存在して,こうした危険性が薄いものもありますが,それでもトラブルになる事案ですからどこかに落とし穴があってもおかしくありません。

こうやって,危険をできるだけ排除しながらも,事実関係をほぼ把握することで,私(弁護士)は,やっと,それなりの自信を持って法律的な回答ができるようになります。ただ,それでも,「○○を前提としたら,こうなります」という答え方にならざるをえないこともあります。

何か,疑ってかかっているように感じられるかもしれませんが,弁護士の仕事の性質上,仕方のないことだと思います。「私はこういう症状です」という患者の自己申告だけで診断するようなものに近いところがありますので。

弁護士になってすぐは,相談者から聞いたことがほぼ真実なのだという前提で回答しがちです(少なくとも,私にはそういう傾向があったことは否めません)。相談者が語っている様子からしてウソっぽくはない,とか,相談者が言っていることを疑った形になるのはよくない,とか,そんな理由からだと思います。

ただ,法的紛争のほとんどは相手方が存在する話。ウソをつくような相談者ではなくても,思わぬ展開になってしまうこともありうるのです(そうなるのには,ここで書いた「「語り」が内包する危険」の他にもいろいろな要因がありますが)。

 

主張立証の問題(つづく)

ここで書いた「語り」が内包する危険を乗り越え,相談者の言っている真実を正確に把握でき,相談のときに弁護士が示した法律構成が正しいとしても,それでも本来あるべき解決を迎えられない場合があります。

そのひとつは,

裁判になった場合には相談者側が証明しなければならないことなのに,立証の材料(証拠)を相談者が有していないとき

です。私が法律相談をこなしているなかでもよくあります。

今度は,このことについて,もう少し書いてみようと思います。

大雪によるご近所トラブル、大量発生?

弁護士ドットコムの相談を眺めていると,最近,雪によって生じたトラブルの相談が多い。

たとえば,隣家の屋根雪が落ちてきて,自動車が損傷したとか。

また,ネット相談には上がってきていなくても,積雪が原因で起きた交通事故は多いと思われる。スタッドレスタイヤ不着用だと,相当滑るので。ただ,交通事故の場合,結局過失割合の判断材料ということで,通常の処理内で解決できそうだ。

やはり問題は,落雪とか除雪トラブルだろう。

金銭的には深刻な金額になっていなくても,感情的にかなりもつれていることがある。

 

このような相談は,雪国である北陸(富山県,石川県,福井県,新潟県?)あたりでは,実は毎年それなりにあると思われるが,その多くは裁判所に持ち込まれないまま解決するか沙汰止みになっているので,裁判所の判決例が蓄積されていない。

だから,相談を受けた弁護士も,「このケースはこうだ」と断言しづらいことが多い。

駐車場の雪は誰がどのように除かすべきか? そんな気軽な質問も,弁護士に聞いてみたら意外と悩んだ顔をするかもしれない。

 

落雪について,過去の裁判例を探ってみると,

昭和51年8月23日札幌高裁判決(判例タイムズ342-112,判例時報850-43)が一つ大きな参考判決例であるといえる。

この裁判は,歩行者が歩道を通っていたところ,民家の屋根の雪が歩行者の頭上に落下してきて,歩行者が埋没し,窒息死した事案で,死亡した歩行者の遺族が民家の所有占有者と道路の設置管理者である国に損害賠償請求をしたものである。

結論として,判決は,家屋の所有占有者と国が遺族に損害賠償する義務があると認めた。このうち,所有占有者の責任についての判示を要約(一部匿名化・削除)して掲載する(正確には原判決に当たって下さい)。

 Y(家屋の所有占有者)が本件建物の屋根に雪止を設置したのは、本件事故発生の三、四年前であつたこと、Yは、昭和四八年一〇月上旬頃、本件建物の屋根の古いトタン葺の上にカラー長尺鉄板を葺いたが、その際、棟木に打ち込んであつた五寸釘を打ち替えて元のままの雪止を設置しておいたこと、本件事故発生当時雪止の丸太を懸吊する鉄線はいずれも赤く錆びついていたことが認められる。
 而して前段認定の事実と雪止の鉄線が切断した態様から推すと、本件事故発生の当時雪止の鉄線の張力は、かなり弱化していて、そのため積雪による荷重に耐え切れずに切断したものと認めざるを得ない。
 Yは、本件建物の屋根に設置されていた雪止は、士別地方で用いられている雪止としては通常のものであつて、本件事故発生当時も通常の落雪防止機能を有していた旨主張する。しかしながら士別市における一一八センチメートルという積雪量は、一二月二〇日頃現在のそれとしては、例年にない程多いものであるとしても、冬期間全体を通して見れば、それは決して異常に多い積雪量などと言えないことは明白であるし、また、士別地方では、本件落雪のあつた昭和四八年一二月二一日の朝、それまで何日か続いていた寒気が弛み、これが本件落雪の一因であったことが窺われるけれども、冬期間に何日間か続いた寒気が急に弛むという気象現象はさほどに稀なものではなく、そのような場合に屋根の積雪が落ち易い状態になることは降雪地では公知の事実である。右のとおりとすると、本件事故発生の当時、士別地方に、同地方で用いられている通常の雪止であつて通常の落雪防止機能を有するものによつては屋根の積雪の落下を防止し得ない程に異常に多量な積雪があり、異常な気象現象が現われたものとみることは到底できない。
 本件建物の屋根に設置されていた雪止の設備は、民法第七一七条第一項にいう「土地ノ工作物」にあたるものというべきところ、上叙判示したところによれば本件落雪は、右「土地ノ工作物」としての前記雪止設備の保存の瑕疵に因るものということができる。たとえ前判示の気象現象が本件落雪の一因であつたとしても、右の判断が左右されるものではないし、また、たとえYが右瑕疵に気付いていなかつたとしても同様である。そうだとすると、結局において、Xの死亡は、右「土地ノ工作物」としての前記雪止設備の保存の瑕疵に因つたものといわざるを得ない。

このようにして,裁判所は,家屋の所有占有者の責任を認めている。

被害者側は,民法717条1項の「土地の工作物」責任を主張していた。

ここで,一応,この規定の説明をしておくと,

1 土地の工作物(建物など)の設置又は保存に瑕疵があったこと
2 その瑕疵によって第三者に損害が発生したこと

この要件が揃えば,土地の工作物(建物など)の所有占有者が第三者に対し損害賠償責任を負うことになる,というものである。

ここでいう「瑕疵」というのは,その種類の工作物(建物など)として通常備えるべき安全性を欠いていることを意味している。この判決は,当該家屋が通常備えるべき安全性を欠いていたと判断したのである。

判決の論理をごく単純化すると,例年その地域で降っている雪にも耐えきれない設備であった以上,設置保存の瑕疵がある,ということになるだろう。

 

そして,この判決は,人の死亡や傷害を伴わない物品の損害の場合においても,参考になると思われる。

一般的なケースで,落雪により損害が出た場合においても,「土地の工作物の設置保存の瑕疵」の観点から考えるべきであり,たとえば具体的に「雪止めを設置すべきであったか」,「屋根雪の除去をすべきであったか」,「注意喚起すべきであったか」ということが問題になってくる。そして,その際には当該地域での例年の状況も重視されるのだろうと思われる。

 

このように,各当事者がどのような行動を取って事件が発生したのか,詳細に事実関係を押さえ,また,例年の積雪状況も知り,その上で法律を適用しなければならない。よって,雪に関するトラブルについては,口頭の短時間の相談では,きっちりとした結論に達しにくいかもしれない。

 

なお,今回取り上げた判決について,道路の管理瑕疵の問題を中心に行政官が論じた文章があるので,リンクを貼っておく。

http://www.hokuhoku.ne.jp/rmec/18pdf/38-39.pdf

弁護士保険、弁護士費用特約の使い方

弁護士保険、弁護士費用特約を知っていますか?

弁護士保険」とか「弁護士費用特約」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。

これらは、日本では、自動車保険(共済)、火災保険、傷害保険の特約として、各損害保険会社・共済協同組合から販売されているものです。

自動車をお持ちの方であれば、自動車保険(共済)に入る際に、「弁護士費用特約」はどうしますか? と聞かれた経験があるかと思います。

「弁護士保険」と言っても「弁護士費用特約」と言ってもかまいませんし、保険会社によっては「弁護士費用補償特約」と呼ぶこともありますが、ここでは、「弁護士費用特約」と呼んで話を進めます。

弁護士費用特約が使えるのはどんなとき?

弁護士費用特約がどんなときに使えるかは、その保険の契約書に書いてあります!

・・・というのが正確な答えではありますが、不親切ですので、多くの場合はこうです、ということをご説明します。

ここでは、自動車事故を例に挙げて説明します

弁護士費用特約が使えるのは、

  1. 契約中の自動車の搭乗者が自動車事故に遭って、死亡・後遺障害・ケガによる入院通院といった損害を受けた場合(人的損害、人損
  2. 契約中の自動車の搭乗者が自動車事故に遭って、その自動車など所有・使用・管理する物品に損害を受けた場合(物的損害、物損
  3. 記名被保険者(大雑把に言うと保険の加入者)等が受けた損害については、契約中の自動車に搭乗していない場面についても費用補償

と、簡単に言うと、このようになります。

そして、事故に遭って、相手方や相手方の保険会社と交渉をしても納得のいく回答がもらえないときなどに、ご自身が加入している保険会社の同意のもと、相手方への損害賠償請求を弁護士に依頼することができるのです。

訴訟(裁判)にならない段階でも弁護士に依頼することができますし、最終的に訴訟(裁判)に至らないで解決することも現にあります。

弁護士費用特約を使うと、費用面でどのようなメリットがあるか?

弁護士費用特約が付加されている場合、多くの特約では、相談料としては最大10万円まで、弁護士費用総額としては最大300万円までが補償される内容になっています。

多くの交通事故案件では、弁護士費用がこの最大額を超えることはありません。最大額を超える場合には、賠償額自体がかなり大きくなっています。

弁護士費用の算出方法については、私にご依頼をいただく際には、しっかりと説明いたします(保険会社が費用を負担する形になりますが、依頼者と弁護士の間の契約でもあるためです)。

なお、弁護士費用特約を使っても、自動車保険の等級は下がりません。

弁護士費用特約を使ったほうがいいとき(交通事故編)

死亡・後遺障害・ケガなど、人的損害が発生した事故の場合

人的損害が発生しているときには、相手方保険会社の提示している額でいいのか、弁護士のアドバイスをもらう方が望ましいといえます。

弁護士の使い方としては、訴訟(裁判)をする場合はもちろん、紛争解決センターを利用したり、示談交渉を任せたりすることもできます。

保険会社から提示された賠償額にどこか疑問があるとき、その額が妥当適切か確認するために法律相談を受け、その後の対応を検討する、という利用方法もあると思います。

過失割合に争いがある場合

交通事故の当事者の間では、どちらに何割過失があるかということが問題になることがよくあります。

これを 過失割合 といいます。

過失割合については、裁判例の積み重ねなどから、事故類型ごとに基準が作られています(赤本、青本といった書籍があります)。

保険会社は、そうした裁判例や基準を念頭に提示をしてきますが、やはり相当程度、自車側に有利な見方をすることも多いです。

類型は用意されていますが、実際のところ、類型に当てはめてすぐ解決する事故ばかりではありません。

普段このようなことに馴染みのない交通事故被害者が交渉をしていくことは、相当難しいといえます。

このようなときにこそ弁護士に依頼した方がいいでしょう。

10対0で相手方が悪い事故(もらい事故)の場合

自車側にも過失がある場合については、相手への損害賠償をする必要があるので、自車側で加入している保険会社が相手方と交渉をする流れになります。

しかし、自車側に過失がない場合、自車側で加入している保険会社は相手方と交渉する根拠がありませんので、被害者が自ら相手方本人や相手方保険会社と交渉しなければならないことになってしまいます。

このようなとき、相手方本人や相手方保険会社から誠実な回答がなされなければ、自車側の保険会社から同意を得た上で、弁護士に依頼して、相手方と交渉してもらうことも手法の一つでしょう。

弁護士費用特約で依頼する弁護士は選べる?

誰に依頼するか選べます

弁護士費用特約を使った場合には、自分が加入した保険会社が選んだ弁護士をつけなければならないのでしょうか?

答えは、 No です。選べます。

保険会社によっては、特定の弁護士を紹介する会社もありますし、弁護士会(日弁連)を通じて名簿順に紹介してもらう会社もあります。

そうやって、知っている弁護士がいない人には、何らかの形で弁護士を紹介する制度はあります。

しかし、実際は、ご自分で探して、最も良いと思われた弁護士に依頼するということも可能です。

石川県、富山県、福井県の事件を重点的にお受けします

私は、石川県金沢市の事務所に勤める弁護士ですが、弁護士費用特約を使って弁護士に依頼したいという方には積極的にご対応いたします。

石川県内については金沢市周辺だけではなく、七尾市や小松市周辺の方の案件をお受けすることも多いですし、富山県西部(高岡市、小矢部市、砺波市、南砺市など)の案件をお受けすることもあります。福井県の方についても、交通事故・交通事故以外とも受任経験があります。

基本的には、相談は法律事務所で、ということになりますので、ある程度近くて相談しやすい弁護士がいいと思いますが、ご縁次第というところもあります。

弁護士費用特約を使って弁護士に依頼したいときには、まずは電話かメールで、私に連絡してみてください。

弁護士の「専門」とは?

「専門」を名乗る弁護士が増えている

昨今は、インターネット上で、専門性を謳う弁護士が多く見られます。

専門表示が多い分野は?

昨今多い専門表示は、「離婚専門」と「交通事故専門」の2種類です。

離婚については、「離婚弁護士」という自称の仕方もあります。要するに、離婚問題ばかりを扱っているとか、離婚問題を扱う割合が非常に高いとか、離婚問題に相当注力している、という自己紹介です。

交通事故というのは、交通事故後の示談交渉や訴訟を引き受ける、ということです。

最近は下火ですが、過払い・債務整理の専門性を誇る事務所・弁護士も多いようです。

また、これまではほとんど見られませんでしたが、最近では、「刑事専門」を謳う事務所も出現してきました。

実際にはどうなのか? ~本当に「専門」なのか~

実際のところ、「専門」と表示していても、そればかりをしているという弁護士はかなり少ないように思います。

世の中には、ある分野の仕事だけに集中している弁護士もいますが、そうした弁護士の多くは、仕事の供給元も相当程度固定化しているので、外部へ向けて「専門」を自称する機会があまりありません。

一般的には、弁護士ごとに、「○○パーセントが××の案件、○○パーセントが▲▲の案件」というような傾向の差はありますので、それぞれの弁護士において、何らかの仕事についての経験や手持ち案件が多い、ということは言えるものと思います。

特に、地方の弁護士は、基本的に何かに特化していません。地方で弁護士をしていると、自然といろいろな法律相談を担当し、いろいろな依頼を受任することになるからです。

ですから、地方で弁護士をしていて、「何が専門ですか?」と聞かれると、なかなか答えづらいものがあります。たとえば、医者が「耳鼻咽喉科」や「産婦人科」や「心療内科」に所属していれば、基本的にその科に関係する患者さんが来て、問診をして診察することになるわけです。そういうのに比べると、○○の案件が多めというだけで「○○専門」と言っていいものかどうか、たいへん迷ってしまいます。

インターネット時代の傾向

ただし、上の説明は、だんだんと不正確になってきているかもしれません。インターネットの普及によって、それぞれの弁護士が見知らぬ人に向けて、受任したい事件をアピールすることができるようになっているためです。

たとえば、離婚事件の経験がごく少なくても、離婚事件を他に今やっていなくても、離婚事件の集客をすることが可能です(その際、離婚専門と自称するのは間違っていると思いますが、力を入れたい分野とか鍛錬している分野としてアピールすることは問題ないはずです)。

そうして、結果的に、受任する案件の多くが離婚事件になったとして…。そうすると、客観的に「離婚専門弁護士」と言ってもおかしくない状態にはなります(受けている案件が多いだけで本当に「専門」なのかという問題はありますが)。

これは、交通事故や刑事事件など、他の分野でも言えることです。

弁護士探しにおいて注意すべきこと

客観性が担保されていない「専門」表示

日弁連では、専門表示は客観性が担保されていないことから、「現状ではその表示を控えるのが望ましい」としています(参考サイト 小松亀一弁護士「弁護士業務広告規程ガイドライン(運用指針)全文紹介3」)。

要するに、現状で「専門」を名乗るために必要な要件があるわけではないのです。

そのような状況で、各自の判断で「専門」を自称しているわけです。

同じ事務所や同じ弁護士が「交通事故専門サイト」「過払い金専門サイト」「離婚専門サイト」「相続専門サイト」など、複数のサイト(ドメインが違っていたりする)を運用しているのは、それぞれの弁護士が自己責任において自称できるからです。

そもそも、「専門」弁護士を選ぶべきか?

もっと大事なことがある?

そういう意味では、今は、特に都市部においては、注意して探せば、ある種類の案件を中心に取り扱っている弁護士を探し当てることはできるはずです(しょせん「専門」は自称可能ですので、相談のときにしっかり確認することが前提になりそうですが…)。

しかし、ある種類の案件をたくさん扱っているからといって、その案件の処理について適切な処理を受けられるかというと、必ずしもそうではないと思います。

確かに、同じ種類の案件をたくさん扱っていれば、他の案件での経験を生かして手慣れた処理がされる可能性は高いといえます。その点は比較的安心だろうと思います。ただ、最も重要なのは、依頼する弁護士との意思疎通をしっかりできるか否かなのです。また、あなたの案件に労力をしっかり振り向けてもらえるかということも重要です。

「専門」表示は参考程度に

ここまで書いてきたように、○○専門という表示をすることについて明確な規制はありません。また、たとえば「離婚が得意」「交通事故が得意」という表示については、もしかすると弁護士が自分でそう思っているだけ、ということもありえます…。

そして、「専門」というのが嘘ではないにしても、どこまでその種類の仕事に集中しているのかは、なかなか確かめにくいところです。

ですから、あまり「専門」を追い求めても、得るものは大きくないのでは、と思います(特に、インターネット上では、定型的な宣伝サイトも多いので、客観的な比較が困難)。

それから、繰り返しますが、弁護士に依頼するにあたって大事なのは、「意思疎通」、「労力の振り分け」です。依頼する案件がどういう種類のものなのかにもよりますが、専門性の高さ低さについて弁護士を比較するよりは、弁護士の人格や事務所の態勢を判断し、実際に依頼したときの受任態勢を確認するほうに力を注いだ方がいいのではないかと思います。

弁護士の探し方・見つけ方・選び方

変わってきている「弁護士の探し方・見つけ方」

変化のきっかけ=広告解禁

弁護士と依頼者とのマッチングについては、2000年に弁護士の広告が解禁され(それまでは日弁連の規定で自主規制されてきた)、インターネットを活用する弁護士が増えたことで急激に様相が変わってきています。

以下は、時事通信が配信した2000年9月30日の記事です。

弁護士広告、10月1日解禁=ネットで検索サービスも

 これまで原則的に禁止されていた弁護士の広告が10月1日、解禁される。今のとこ
ろ、多くの事務所が「周りの様子を見てから」としており出足は鈍そうだが、インター
ネットを使った検索サービスが同日、スタートする。いずれはテレビや折り込みのチラ
シを使って得意分野をアピールする広告も現れそうで、「敷居の高かった弁護士にアク
セスしやすくなれば」と期待が高まっている。
 日弁連はこれまで、「弁護士の広告は品位を落とす」などの理由で、氏名や弁護士登
録の時期などを除いて禁止。媒体も電話帳、看板、新聞、雑誌などに限定していた。

広告解禁前は、多くが、知人の知人といった人づてであるとか、事業者であれば事業者団体の関係などで、弁護士にたどり着き、たどり着いた弁護士にそのまま依頼するというのが通常パターンであり、つてがない人は弁護士会などの法律相談を利用して新しく弁護士と知り合っていたのでしょう。

そして、今でも、そうしたパターンは相当の割合を占めています(今では、国が設立した「法テラス」もあり、そうした機関で案内される法律相談を利用して弁護士を探すことが容易になってきています)。

しかし、その一方、テレビやインターネットなど、かつて使われていなかった媒体で弁護士(法律事務所)を知り、依頼にまで結びつくケースも確実に増えてきています。

テレビCMと弁護士

たとえば北陸では・・・

北陸(富山県・石川県・福井県)においては、地元の弁護士や法律事務所が単独でテレビコマーシャル(CM)を打つことは今のところほとんどありません。地元の弁護士たちは、全員が県別の弁護士会に所属していますが、所属の弁護士会がテレビCMを打つことはあります(石川県の金沢弁護士会はCMを打っています)。その場合、必然的に、「ご相談は、地元の弁護士会へ」という内容になります。

これに対し、事務所単体でテレビCMを打つのが、東京等に本部を置く法律事務所です。体感的に、石川県で最もCMが多いのは、弁護士法人アディーレ法律事務所です。ここは、東京に本部を置きつつ、金沢支店や富山支店を設置しています。他にもCMを打っている法律事務所がありますが、北陸には支店がない法律事務所も多いです。

また、法律事務所(弁護士の事務所)ではない「司法書士事務所」、「行政書士事務所」、「法務事務所」などがCMを打っているケースもあります。

どちらがいいのか?

テレビCMを打つ法律事務所(弁護士)がいいのか、そうでない法律事務所(弁護士)がいいのか?

これについては、福岡県の向原弁護士がわかりやすくまとめておられ、私もほとんど同感です。

日弁連の規定では、依頼者が弁護士に任せた仕事は、依頼された弁護士自身(または弁護士資格者からなる弁護士法人)が責任を持ってこなさないといけないことになっています。法律事務所の事務職員は、あくまで弁護士の仕事を補助する立場です。事務職員に仕事を振り分けすぎて、弁護士が個別の仕事の進捗を把握できなくなっているとすれば、その弁護士には問題があるといえます。

もちろん、CMを打って大量に受注する法律事務所(弁護士)でも、そのあたりをしっかりやっているところもあるでしょう。しかし、CMだけを見てもその法律事務所(弁護士)の事務処理体制はわかりません。CMはあくまで事務所が伝えたいイメージなのです。

以上からすると、テレビCMを出している事務所に案件を任せようとする場合は、正式に任せる前に、「どのように処理をしてもらえるのか、弁護士が案件にどれだけ関わるのか、案件の処理について聞きたいことが出たらどこに聞いたらいいのか」ということを確認した上で、できれば、地元の弁護士と比較して決めた方がいいということになると思われます。

では、地元の弁護士をどうやって探すか、見つけるか?

テレビ・新聞・電話「広告」ではわからない

地元の弁護士は東京等の弁護士事務所と違ってテレビCMを打たないし、新聞や電話帳などを見てもよくわからない。新聞広告や電話帳広告にも、何か実のある情報が載っているわけではないので…。

弁護士会や各種公的機関に相談に行っても、どんな弁護士が担当するか分からない。

そこで、どうすればいいでしょうか?

これについて、簡単に私の考えを書きたいと思います。

「広告」的な部分以外でのフィーリングの合い方を重視

今は、弁護士の人数が増え、特に若い弁護士が増えている時代ですので、地元のお知り合いをたどっていけば、意外と弁護士にたどり着く可能性もあるように思います。本来は、共通の知人がいれば、依頼する関係になってもコミュニケーションがとりやすいのです。ただ、そうは言っても、知り合いの知り合いに弁護士がいるかどうかは、人によるでしょうね…。

人づて・口コミといったところが難しいとなれば、どこかの相談担当弁護士に相談するか、またはインターネットを使うか、ということになります。

弁護士会、法テラス、市役所等の相談は、弁護士と知り合うきっかけにはなります。ただ、偶然出てきた弁護士と相談して、そこでの応対だけで、依頼するかどうか選べ(信頼できるか否か判断しろ)、というのは、本当は難しいことです。

これまで弁護士は情報発信をしなさすぎたきらいがありますが、少しずつ、弁護士にもインターネットでいろいろと書く人が増えてきました。そこで、普段からご自身の気になる話題などについて、インターネットで調べながら、その書き手がどんな人物かお知りになることがいいのではないかと思います。

そういう意味で、インターネットのサイト(ブログ等)のなかの、いかにも「広告」っぽいという部分以外から感じ取れるものがけっこう重要なのではないかなと思うのです。

ただし、インターネットでのコミュニケーションに限界があるのはもちろんのことです。文章を読むだけでは、どんな人かわからない、ということもあると思います。それに、ちゃんと法律相談しようと思えば面談しなければいけませんので、やはり一度面談で法律相談をした上で、信頼できるか最終的に判断して、委任するかどうかを決めればよいと思います。

(この関係で、まだ書き足りないところがありますので、また書きます。)

石川県金沢市の弁護士 山岸陽平

石川県金沢市の弁護士 山岸陽平は、北陸3県(石川県富山県福井県)のご依頼に対応しています。

交通事故、 相続、 離婚、 男女関係の慰謝料請求、 借金問題(破産・債務整理)、 刑事事件(逮捕されている場合) については、初回法律相談(面談)を無料で行っています。

詳しくは、yybengo.com へ! プロフィール取扱業務費用ご連絡方法などをご説明します。

 

主な対応地域:

石川県全域

  • 金沢市
  • 野々市市
  • 白山市
  • 能美市
  • かほく市
  • 小松市
  • 加賀市
  • 七尾市
  • 羽咋市
  • 輪島市
  • 珠洲市
  • 内灘町
  • 津幡町
  • 川北町
  • 宝達志水町
  • 中能登町
  • 志賀町
  • 穴水町
  • 能登町

富山県呉西、富山市

  • 高岡市
  • 砺波市
  • 南砺市
  • 小矢部市
  • 氷見市
  • 射水市
  • 富山市

福井県嶺北

  • 福井市
  • あわら市
  • 坂井市
  • 勝山市
  • 大野市
  • 鯖江市
  • 越前市
  • 永平寺町
  • 池田町
  • 越前町
  • 南越前町

*これらの地域外に関する案件も受任可能です

山岸陽平 略歴

1981(昭和56)年 富山県生まれ 南砺市、高岡市で育つ

京都大学法学部、京都大学法科大学院(法学研究科法曹養成専攻)修了

司法試験合格後、2010年金沢弁護士会に登録し弁護士業務を行っている