金沢地方裁判所・名古屋高等裁判所金沢支部 担当裁判官 2023/4~

金沢地方裁判所、名古屋高等裁判所金沢支部の担当裁判官リスト

※公式のものではないので、個別の件ごとに確認が必要です。

 

金沢地方裁判所 令和5年(2023年)4月切り替わり

民事部

A係 大畑勇馬→(※他の係に引き継がれた模様)

B係 小川弘持

C係 小嶋順平→中嶋万紀子

D係 松浪聖一

E係 山門 優→土屋 毅(部総括)

刑事部

A係 野村 充(部総括)

B係 白井知志→川内真里

 

名古屋高等裁判所金沢支部  令和5年(2023年)4月切り替わり

第1部(民事)

部総括 吉田尚弘

C係主任 加藤靖→升川智道

D係主任 平野剛史

第2部(刑事)

部総括 山田耕司

主任 南うらら

「時効の中断」→「時効の更新」

民法が改正され、従来「時効の中断」だったものが「時効の更新」に変わった。

また、従来「時効の停止」だったものが「時効の完成猶予」に変わった。

権利行使の期間制限を意味する消滅時効の制度は、法律に詳しくない人たちにも非常に重要な制度である。特に、債権(代金や貸金返還)の支払を請求する側、債権の支払を請求される側それぞれにとって、消滅時効は重要だ。

言葉そのものから意味を想像しやすい形に変わったことはよかったことだろう。

以前の「時効の中断」や「時効の停止」では、中断や停止をした後にどうなりそうなのかが、言葉そのものからは読み取ることができなかった。

時効の更新」であれば、ウェブページ上で時計のカウントが進んでいる、そのページを”更新”することによって、また時計が1から進むというイメージになる。

時効の完成猶予」であれば、当面時効が完成しないだけで、その後猶予状態でなくなれば、完成する可能性は残存しているということがわかりやすい。

しかし、どういう場合に、「時効の更新」や「時効の完成猶予」となるのかについては、そう簡単な話ではない。これは、しっかり調べる必要があり、複雑または多額の問題になれば弁護士に相談・依頼して解決すべき問題になってくる。

たとえば、昔、借りていたサラ金業者から請求書や督促状が来た、とか、裁判所から支払督促や訴状が送られてきた、というような場合は、「昔」がどれくらいか、サラ金業者とどういうやりとりをしてきたかにもよるけれども、弁護士に相談したほうがいい。時効を援用できるのにしないでお金を払ったら、その後取り返しのつかないことになるからだ。

↑というのは、こういう理屈である。「時効の更新」は、時効期間の満了までに行うものであり、時効期間が満了した後にはできない。更新できない、ということは、時効期間満了後に、”うっかり”支払ったとしても、その後に時効を援用できるような気がしてくる。お金を返せ、と言える気もしてくる。しかし、そうではない。債務者が消滅時効の期間満了後に債務の一部を弁済したり、支払することを約束したりして、債務承認を行った場合、債務者は時効を援用することができなくなる。

なぜかといえば、

①時効期間満了後に一旦債務承認して、さらに時効を援用するのは矛盾する行為であること、

②債権者は「債務者はもはや時効を援用しないであろう」と期待するはずで、その期待を保護すべきであること

が挙げられており、そうだから、「時効の援用を認めないことが信義則に照らして相当」だとされているのである。

時効は援用しなければ意味をなさない(当事者が「時効を援用します」と言わないと、裁判所は、権利が残っていると考えて、請求を認める判決をする)ということが、法律の制度上、非常に重要なポイントである。

債権者が債務者に時効期間が満了していることを教える義務はないとされる。そのため、時効期間が満了しているのに、債権者は請求をすることがあるのである。

債務者にとっては、民法改正で、言葉が少しわかりやすくなったといっても、やはり複雑なのが時効制度だといえる。

金沢弁護士会副会長就任のご挨拶

わたくし、弁護士山岸陽平は、2020年(令和2年)4月1日より、金沢弁護士会の副会長に就任します。任期は1年間です。

金沢弁護士会は、石川県に事務所を置く弁護士全員が加入する団体です。

弁護士には自治権があり、監督官庁はありません。その分、弁護士会が担う役割は大きいものがありますので、私にとっては重責となりますが、心して取り組んでいきたいと考えています。

また、近年、本当にいろいろな災害が日本を襲っています。新型コロナウイルスもしかりです。県で唯一の弁護士会が地元でできることは何かを考えて取り組む必要性を感じています。

ご指導ご鞭撻のほどお願いいたします。

なお、金沢弁護士会副会長職をこなしながら、当然、お引き受け中のご依頼、新規相談、顧問先の方々からのご相談に対応してまいりますので、よろしくお願い致します。

成人年齢引き下げが養育費に与える影響

久しぶりに、家庭事件ブログを更新しました。

養育費については、これまでの日本があまりにも・・・だったのではないかと思います。払わずに逃げようという試みがしやすくなっており、そうであるだけに、真面目に払うかどうか考えたときに不公平感をもつ人が多く、不払いを助長し、諦めさせる効果を持っていました。

現在議論されている民事執行法の改正により、養育費を始めとする債権の回収がやりやすくなるということですが、それとともに、養育費の金額や支払い終期(子どもが何歳になるまで支払うか?)という問題についてもクローズアップされる予感があります。

むしろ、以前の日本社会が家族依存型だった、という観点

日経新聞3018年9月24日朝刊3面「エコノフォーカス」。「単身・無職が最多 しぼむ4人家族」「世帯統計、政策前提崩れる」との見出しである。

70年続いている総務省の家計調査は、標本調査であるが、その標本(9000世帯)は夫婦と子ども2人の「標準世帯」を含む2人以上世帯が9割以上を占めており、単身は約750件で8%だという。

しかし、国勢調査では、単身世帯は2015年に1840万世帯で、世帯全体の35%を占めている。そのため、実際と乖離が生じているのではないか、ということである。

社会保障においては、こうした統計のとり方の悪影響はさらに深刻で、単身で収入が少ない高齢者の問題が見過ごされがちになるという。

みずほ銀行情報総研の藤森克彦氏は、「単身・無職を少数派と考えず、家族依存型の社会保障を見直さないといけない」と話す。


【感想】

日経新聞本紙にはグラフが載っているが、1人世帯や2人世帯で、有業者がいないという世帯の増え方は、ここ40年余りで劇的である。それぞれ、全体における割合で、4倍以上、6倍以上になっている。

他方で、「標準世帯」の代表格である、4人家族のうち1人だけが有業者だという世帯の割合も、全体における割合で、3分の1以下になっていて、減り方が劇的である。

これまで、日本社会は、家族や親類で支え合い、もたれあって、大黒柱の男性の収入によって、個々の収入が少ない人の生活を支えてきた。

それが崩れ、家族に「生活保障」を依存していた人たちが社会に溢れ出している状況である。

「8050問題」といって、80歳代の親が50歳代の子どもの生活を支えるという形態の多発が問題になってきており、「そのような状態を許していいのか?」という見方をしがちであるが、これは「大黒柱」が老朽化してもそれに頼ってやっていくことでなんとかしのげるという前提での状況であり、こんな状況は何十年も続きようがない、過渡期特有の事態なのではないかと思われる。

「不正義」といえばかなり「不正義」であるが、子どもが親の年金で食べていくことによって、社会にとっては、もろに子ども個々の生活全体を保障しなければならない事態を回避できているということになる。その意味で、いびつではあるが、まだ、家族依存型でぎりぎりやっている。

しかし、今後、社会で支える方向にすんなりと切り替わるようにも思い難い。将来や老後への備えについての意識の差が大きく、不公平感が生じやすい。

年金という緩衝材がごく薄くなっていくことが予想される中、日本社会は正念場を迎える。

北陸の大雪による交通事故などの賠償・保険問題が急増中

今年は30年以上ぶりの大雪で、北陸地方(福井県・石川県・富山県)は、あらゆる業界が本業どころではなく、除雪に四苦八苦です。

私も、石川県金沢市に法律事務所があり、市内に住んでいるのですが、出勤さえ大変な日が続き、除雪を並行しながら、歯を食いしばりながらの仕事の処理でした。

 

さて、本題ですが、大雪の影響もあって、交通事故の発生頻度が増しています。

特に、交通事故の「被害」に遭われた方で、自動車保険の弁護士費用特約にご加入の方は、費用のご負担なく、また、等級のダウンもなく、弁護士に相談することができ、弁護士への依頼も可能です。

相談・依頼先の弁護士は、加入する保険会社・弁護士会から紹介を受けることもできますが、ご自分のお知り合いの弁護士や、インターネットなどで探し当てられた弁護士に相談・依頼することもできます。

私は、石川県で弁護士をし、法律事務所(金沢法律事務所)を運営していますが、弁護士保険の規定上、石川県内の交通事故のほか、富山県内・福井県内の交通事故にも対応することができます。

私のもとには、よく、保険会社や弁護士会からの紹介ではない形で、弁護士費用特約を使った相談を申し込まれる方がおられます。弁護士費用特約に入っておられる場合には、ご相談者が支出をしなくても、保険会社が相談費用をしっかり払ってくれますから、弁護士としても、ご相談に応じることに何らの支障はありません。どうぞ、気兼ねなくお問い合わせ下さい。

また、事故に遭われ、大変ご不安な中、依頼をするのであれば、自分で弁護士(法律事務所)を選ぶほうが不安の解消につながり、納得の行く解決につながりやすいのではないでしょうか。事故はめったに遭うものではなく、弁護士と関わることの少ない被害者の方が多いことは承知しておりますので、私は、できるだけわかりやすくご説明をしようと心がけております。

 

たとえば、交通事故の被害に遭われ、

1 相手方の保険会社の提案してきた金額が正しいのかという問題(特に慰謝料の金額など)

2 通院治療の継続の問題

3 後遺障害の認定がしっかりされるかという問題

4 過失割合や事故態様の問題

などでお悩みの方は、金沢法律事務所(弁護士山岸陽平が運営している事務所です)にお電話下さい。まずは、どのような案件かお伺いし、対応を進めます。基本的には、ご来訪いただいての相談からスタートです。

金沢法律事務所の電話は、076-208-3227 です。基本的な営業時間は、平日午前9時~午後5時です。その他の時間には電話に出られないことが多いですが、ホームページのメールフォームなどでご連絡下さい。

2018年2月17日 弁護士山岸の「土曜特別無料法律相談日」

2018年2月17日(土曜)は、無料法律相談日とします。

2月17日は、相談内容を問わず、30分間の面談を無料とします。予約制にしておりますので、2月14日までにお電話などでご予約をお願いします。相談時間の調整をさせていただきます。

電話番号は、076-208-3227 です。当事務所は、通常、土・日・祝は休業しておりますので、お電話をお受けできるのは、基本的に、平日の日中(およそ午前9時~午後5時半)です。

金沢法律事務所(金沢市片町1-1-29 混元丹ビル9階)の相談室にて実施します。香林坊アトリオ向かい、ミスタードーナツから金沢市役所方向に3軒ほど進んだビルです。※当事務所は駐車場をご用意しておりませんので、お車の方は、近隣の駐車場などへお願いします。

 

※ ご予約時、すでに利害関係が発生していないか確認するため、お名前、ご住所、相手方のお名前、どのようなご相談か、などをお伺いします。

 

当事務所の弁護士山岸が個人のクライアントから多くお引き受けしているのは、交通事故、離婚、相続、成年後見、各種損害賠償・慰謝料(インターネット名誉毀損なども含む)などです。

特に、家事事件では、離婚やそれにまつわる婚姻費用・養育費・親権者・面会交流問題に関して、調停、訴訟の経験多数です。また、相続に関しては、調停や審判だけではなく、遺言無効確認訴訟、遺留分減殺請求訴訟、養子縁組無効確認訴訟、生前の財産引き出しに関する損害賠償・不当利得返還請求訴訟など、多様な類型の訴訟を担当してきました。

交通事故に関しても、示談交渉(慰謝料の増額や過失割合など)、訴訟、紛争処理センターへのあっせん申立て、自賠責保険に対する被害者請求、自賠責保険の後遺障害認定に対する異議申立てに多数関わってきました。

近年は、インターネットの掲示板サイト(爆サイ、5ch.net、2ch.sc)などにおける名誉毀損等についての相談もお受けしています。

会社や事業者のクライアントから多くお引き受けしているご相談は、債権回収、契約書チェック、労務に関する紛争、事業承継などです。

 

本年もよろしくお願いいたします

新年あけましておめでとうございます。

今年も、金沢市、石川県のみなさまの法律問題の解決のために取り組んでいく所存ですので、なにとぞよろしくお願いいたします。

また、昨年は、私の出身地富山県の北日本新聞に、金沢で働く富山県人として取り上げていただくなど、アイデンティティを喚起されることもありました。私のふるさと南砺市、それから砺波市といったあたりは、弁護士へのアクセスが良いとはいえませんので、今年このふるさと地域のために何かできないかな、と思っています。今のところ、私が出向いての無料相談会などを考えているのですが、何かいいアイデアや、「来てください」というお話があればお寄せ下さい!

 

昨年は、交通事故、相続、離婚、刑事事件を中心として、成年後見、事業活動上の問題、不貞関係、不動産、インターネット関係などなどといったことへも取り組みました。今年も、各分野においてさらに研鑽を進め、新しいご相談にも対応できるようにしたいと思っています。

各分野についてです。

交通事故については、昨年、複数回、自賠責保険の被害者請求の手続をしました。自賠責の後遺障害等級認定もそうですし、保険会社との交渉などを通じて思うのですが、交通事故の分野はそう一筋縄ではいかないことが多いです。私も、それぞれの案件に誠実に取り組む中で経験を積みながら、被害救済や適正な解決のためになる弁護士でいられるよう努力したいところです。

相続でいえば、引き続き、一昨年の預貯金を遺産分割対象とする最高裁判決の影響が気になるところです。今年は、弁護士として、預貯金仮払いの仮処分の代理人をする機会があるかどうか?と思っています。また、遺言作成や相続対策を税務上の観点から進めることが多い昨今ですが、高齢者の真意に沿う対策がなされているのか、立場が異なれば疑問が生じることも多いですし、それどころではなく財産の使い込みを伴うケースも散見されるようです。家庭裁判所ではなく地方裁判所に係属するケース(損害賠償請求や不当利得返還請求として)が増えているという話も聞きます。

また、相続に関連する分野として、高齢者問題がありますが、成年後見や財産管理、消費者被害・詐欺被害、介護や医療など、広がりの大きい分野ですので、さらなる勉強をしていきたいと思っていますし、取得した社会福祉士資格を活かしてつながりの構築を進めていきたいと思っています。

離婚については、一般論として、子どもの引っ張り合いにおける子どもの思いを考えたいと思います。意外と、今後、IT、ICT技術のさらなる進化が子どもの問題を含む離婚においては重要になってくるのではないかと思うのですが、新しい技術の取り入れや隣接分野との融合に積極的な医療福祉分野に比べ、裁判所での解決においてはしばらくは「相変わらず」な状況が続くような気がしています。養育費についての強制執行がしやすい法制度への改正が検討されていますが、養育への関与という意味合いでは、まだまだ部分的な改正に過ぎません。法律家も情報技術に背中を押されるように、場所的な離隔を乗り越えたやり方を当然のように取る時代がくるような気がしています(これは今年の話ではないです。が、今結ぶ約束が10年、20年後にスタンダードなのかはすごく疑問です。)。

刑事事件は、今年6月ころから、勾留された被疑者は、罪の重さにかかわらず被疑者国選弁護の対象になります。これまでは、懲役3年を超える法定刑の罪名が対象でしたが、これが変わります。これは、弁護士の仕事にも、刑事事件に関係する方々にも影響してきます。

などなど、思うままに書き連ねましたが、各分野に関して、法律的な面もそうですが、それにとどまらず、いろいろなことを考えていきたいと思います。

※ ちなみに、趣味的なことでは、選挙制度についてさらに考えてみたいと思っています(改憲案における、参議院合区問題についても…)。また、主権者教育や情報リテラシー教育について、考えを深めたい一年です!

当事務所:土日祝日の刑事弁護態勢

土曜・日曜・祝日の刑事弁護のご依頼について

当事務所(金沢法律事務所、弁護士山岸陽平、金沢弁護士会所属)は、弁護士1名の事務所です。石川県内の他の法律事務所と同様、土曜・日曜・祝日を定休としております。

しかし、土曜・日曜・祝日においても、石川県(特に金沢市)付近で逮捕や勾留された方のご親族などからご要請があれば、私選弁護のお引き受けをできる場合がありますので、そうしたご事情がおありの方は、金沢法律事務所の電話(076-208-3227)にお電話をお願いします。

※ 転送対応ですので、都合により電話に出られないことがあります。また、非通知または携帯電話からの折り返し電話をする場合もあります。その日ごとの事情により、対応できないこともありますので、ご了承下さい。

年末年始につきましても、できるだけ対応します。

費用は事案によりますが、こちら(当事務所ウェブページ)を参考になさって下さい。

※ 距離との兼ね合いで、当事務所で対応しやすいのは、石川県内では、金沢中警察署、金沢東警察署、金沢西警察署(以上、金沢市)、白山警察署(白山市・野々市市)、寺井警察署(能美市・川北町)、小松警察署(小松市)、津幡警察署(かほく市・津幡町・内灘町)、羽咋警察署(羽咋市・志賀町・宝達志水町)。富山県内では、砺波警察署(砺波市)、南砺警察署(南砺市)、小矢部警察署(小矢部市)、高岡警察署(高岡市・射水市一部)。というあたりですが、それ以外の警察署の案件にも対応できることがあります。

※ 勾留された人(被疑者)は裁判所に国選弁護人の選任を求めることができる場合もあります(詐欺、傷害、窃盗、強盗、恐喝、強制わいせつ、自動車運転致傷、違法薬物使用等は被疑者国選対象です。住居侵入、暴行、脅迫、器物損壊等は被疑者国選対象ではありません。)。いずれにしても、逮捕直後(1~3日間程度)の段階では国選弁護人は選任されません。

 

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日本の司法インフラ、デジタル化の遅れについて

今日(2017年12月18日)の日経新聞に、「日本の司法インフラ 弁護士「不満」94% 審理スピードやデジタル化遅れ」というタイトルの記事が掲載されていた。

「日本の司法インフラの使い勝手が良いと思うか」を日経新聞が企業やビジネス系の弁護士に尋ねたところ、弁護士の94%(111人)と企業の61%(118社)が「思わない」と回答したということである。

「使い勝手が良いと思わない」理由の上位は、「審理のスピード」、「ディスカバリーがない」、「損害賠償金額が少ない」、「電磁的方法による文書提出が原則認められていない」、「判例や裁判記録がほとんどデータ化されていない」、「裁判官の質」ということである。

企業においては、特に、「審理のスピード」への不満が強いようだ。

また、諸外国と比べて電子化が遅れているという指摘は、近時かなりなされているところである。電子化と審理スピードの問題は、関連が深いだろう。

東京においては、2021年にも、中目黒に、ビジネス関係訴訟(知財高裁、東京地裁知財部・商事部・破産再生部)などを専門的に扱う裁判所庁舎が設置され、テレビ会議システムを整備するというが、まだまだ道半ばである。特許など知財事件では、通常弁護士同士は紙で証拠を送り合うところ、相互了解のもとに電子データで送り合うこともあるようであるが、他の事件類型ではなかなかそうはいかない。そういうレベルで他の業界と比べてかなり遅れて改善してきている状況である。

裁判システムの効率の悪さ、遅さを指摘する声は、東京に本社や支社のある大企業に限らない。相応の時間をかけて感情を解きほぐして、解決のタイミングを待つ必要のあるような話ではないのであれば、集中的に取り組む労力や費用をかけても早く解決したいということも多い。

裁判所に持ち込む案件に関しては、時間を掛けて双方当事者や代理人弁護士において検討し、また裁判所側も提出された記録をじっくり吟味し、双方の言い分に提出し漏らしがないように配慮して進めているため、このようになっている面もあるだろう。しかし、紛争の当事者双方が早期解決を望んでいるような案件において、システムや専門家がそれに対応できないがために紛争解決機関としての役割を十分果たせていないとすれば大問題だろう。

ビジネスでの電子メールの誤送信にも通じる問題だが、安全性や秘密性との兼ね合いはある。しかし、「課題が多いからやらない」というのではなく、早く課題に向き合って取り組んでいかなければならないのではないか。

弁護士など専門家の仕事の仕方への影響も大きく、積極的に対応しようとする人、あえてしない人、消極的に動く人に分かれそうではあるので、弁護士一丸となって推進することは簡単ではないだろうが、弁護士も動きを起こしていきたいところである。