岐阜県美濃加茂市の藤井浩人市長が受託収賄・事前収賄・あっせん利得処罰法違反の罪で2014年7月に起訴された刑事事件で、3月5日、名古屋地裁において判決が言い渡される予定だ。
世間から見ると意外かもしれないが、弁護士になって働いていると、同時代の別の事件について深く研究する機会があまりない。手持ちの事件に関係するものについてはよく調べるし、押さえなければならないところは押さえるが、やはり「仕事中心」になってしまう。
そうした中では、私は、この事件、比較的興味を持って見てきた。昨年9月、下記サイトの「弁護士コメント」のところにも書いたが、検察・警察がマスコミへどのように情報発信するのかということについて知見を持った郷原信郎弁護士が、それを乗り越えようとする弁護活動を続けてきているので、調べれば調べるだけ考えるための材料が豊富に出てくるというところがある。
http://www.bengo4.com/topics/2059/
(社会への情報発信を続ける郷原信郎弁護士が「自分の仕事」である個別事件についての情報発信も同じ場所(コラムのようなブログ)でして、それ以降ほぼそれに全力投球する形になっていったのには少々驚きもあったが、郷原弁護士はこの仕事に確信を持っていて、あえてその場を使っても情報発信をしたのだろうとも感じた。)
この裁判では、ほぼもっぱら、証人(贈賄側すなわち共犯者的な立場)の証言の信用性が問題になっているが、この「証言の信用性」というのは「融通無碍」的なところがある。判決を書く裁判官の胸先三寸で、有罪にも無罪にも書けるところがある。結論決め打ちの判決は、反対の結論に結びつきやすい重要な点を無視していたり一言の決まり文句で済ませていたりする(まともに書いてしまうと排斥しづらくなるから…)。
自分で記録を読んでいるわけではないので結局漏れ伝わることによるしかないが、今回の裁判では、市長の有罪を立証するための贈賄側証人の法廷外での言動や検察官との打ち合わせ状況についても法廷で話されるほど、この証人の証言の信用性について弁護側によって掘り下げた立証活動がなされていて、そうしたことをまともに取り入れて判断すると、検察官の立証には「合理的な疑い」が生じているといえる可能性が相当高まっているのではないかとも思う。
判決の主文に注目したいし、その理由にも注目したい判決だ。


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