全国最年少の市長が逮捕された件

政治ネタ

世知辛い世の中、私もそれなりにストレスを浴びています。

そういうときは、マニアな趣味の政治ネタで気を紛らわしましょう。

美濃加茂市長 逮捕

現在全国最年少の市長である、藤井浩人・岐阜県美濃加茂市長(29歳。就任時点で28歳10か月)が6月24日、愛知県警に逮捕されました。

各報道によると、被疑事実に係る罪名は受託収賄罪と事前収賄罪など。美濃加茂市議会議員だった2013年3~4月、業者から「浄水設備を市に導入してほしい」と依頼され、市議会本会議で設備導入の検討を求める発言をしたほか、市の担当者に契約締結を要望した。その見返りとして業者から10万円を受け取った。さらに、2013年6月の市長選に立候補を表明する直前の4月、業者から「市長就任後も浄水設備の契約締結を進めてほしい」と頼まれ、20万円を受け取った。・・・ということだといいます。

受託収賄罪というのは、「公務員が」、「請託を受けて」、「その職務に関し」、「賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたとき」に成立する。7年以下の懲役。報道を元にすれば、今回の件は、市議会議員としての職務に関することです。

事前収賄罪というのは、「公務員になろうとする者が」、「その担当すべき職務に関し」、「請託を受けて」、「賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたとき」に成立する。処罰されるのは、「公務員となった場合」である。5年以下の懲役。これは、今回の件で言えば、市長の職務に関することで、市長になる前に受け取った金のことです。

藤井市長は、収賄なんて、事実無根なので、しっかり捜査には協力し潔白をはらしたいと思います!」とTweetしているが、事実無根で逮捕されたのなら大問題です。

実際にどういうことがあったのかということは、まだ明らかになりません。

報道の中には、

 議会関係者によると、藤井市長は2013年3月議会の委員会で、プールに雨水をためておき、災害時にろ過して飲料水に使うよう市議として提案。一般質問では市幹部から「雨水ろ過の導入を検討する」という答弁を引き出した。捜査2課はこうした質問が業者の参入に有利となり、便宜供与にあたると判断した模様だ。

http://mainichi.jp/shimen/news/20140624dde041040036000c.html

というものがありましたので(他社にも同様の報道あり)、美濃市議会の議事録を見てみましたが、インターネットで見られる本会議の議事録には、藤井市議(当時)の質問に答える形で直接的に「雨水ろ過の導入を検討する」という答弁がなされている箇所がないように思えたし、飲用の利用についてはともかく「加茂川総合内水対策計画」というもののなかで、すでに雨水対策として貯留浸透施設を校庭に設置するという案が出ていたのであって、藤井市議の質問によって「雨水ろ過の導入を検討する」という答弁があえて引き出されたという評価には違和感があります。

お金を渡したのか渡していなかったのか、渡したとしてどのような意味合いで渡したのか、ということもありますが、少なくとも受託収賄に関しては、現時点で私はちょっとすっきりしません。贈賄側業者が認める形になっているようで、有罪認定に進みやすいのでしょうが、それでいいのかなと疑問に思います。

ただ、事前収賄については、市長就任後のこの事業関係の進め方が性急かつ特異であり(業者負担で実証実験名目で設備が作られたという)、仮に市議時代に金銭の授受があったとすれば、藤井市長の進め方に甘さがあったように感じられます。

KSD(村上正邦)事件などを取ってみても、一旦起訴されれば、裁判所は、「請託」や「賄賂性(見返り)」の認定がゆるやかであると感じます。ですから、金銭の授受があるような場合に、争って無実を晴らすことは、容易なことではないでしょう。

最年少市長といえば

私がこの件で思い出したのが、志々田浩太郎・元東京都武蔵村山市長。

郵政官僚から、日本新党のスタッフになり、1997年に28歳0か月で武蔵村山市長となった志々田氏でしたが、再選後に三選を目指して臨んだ2002年の選挙で落選しました。そして、その選挙の選挙公報に石原慎太郎東京都知事らの推薦文を勝手に掲載した公職選挙法違反(虚偽事項の公表)で逮捕起訴されました。のちに八王子簡裁で罰金と公民権停止4年の略式命令。選挙期間中に石原氏側から問題視され謝罪する、という下らない経緯でした。

志々田氏の最年少市長記録は今も破られていません。就任時最年少市長記録1位は志々田氏、2位は藤井氏です。

若い政治家は経験が薄い分、狙われやすいのでは

市長の最年少逮捕記録は藤井氏になったわけですが、市長経験者最年少有罪記録とならなければいいのですが。

それにしても、政治の世界は、見返りを期待して近づいてくる人たちが多いですし、それに加えてあまり世間慣れしていないと、いいように使ってやろうと狙う人たちのターゲットになりやすいです。

藤井氏も、議会活動・日常活動とも頑張っていたようですし、市長の立場での振る舞い方を間違った(市議と違って思いついたことも押し通せるので…)のかもしれませんが、あえて自分から市民を裏切って私腹を肥やすというあくどい気持ちまであったかというと「?」です。

今回の件は、別件で逮捕されるような業者に好き勝手やられてしまったという側面があり、業者に引きずられるようにして「市長の収賄」が捜査機関の手の届きやすいところにお膳立てされたという形なのではないでしょうか。

とはいえ、そうした業者と懇意にして、特別な関係と見られてしまうこと自体、政治家(特に首長)として未熟なのかもしれませんし、未熟ゆえにこうなったとしても「次は頑張れ」と言える状況までになるかどうか、というところなのですが。

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金沢法律事務所(石川県金沢市)を主宰する弁護士

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