遺言控除、新設へ?

政府、相続税に「遺言控除」検討 資産移転を円滑化、在宅介護の促進後押し

2015.7.8 06:06

SankeiBiz

 政府・与党は、有効な遺言による相続であることを条件に、一定額を相続税の基礎控除額に上乗せして控除する「遺言控除」を新設する検討に入る。遺言の普及を促して遺産相続をめぐるトラブルを抑え、若い世帯へのスムーズな資産移転を図ることによって在宅介護の促進も後押しする。早ければ2017年度税制改正での実施を目指す。

 8日に開かれる自民党の「家族の絆を守る特命委員会」(古川俊治委員長)で、葉梨康弘法務副大臣が政府内の検討状況を説明する。

相続税は遺産総額から基礎控除額(今年1月から3000万円+法定相続人1人当たり600万円)が差し引かれた上で税率をかけて算出される。遺言控除が新設されると税金のかからない遺産が増える。制度設計は今後詰めるが、控除額は数百万円を軸に検討する。仮に300万円の遺言控除であれば30万~165万円の減税となる計算だ。

現状では相続税の課税対象のうち遺言が残された案件は2~3割程度。トラブルの解決にコストがかさむほか、不動産の処分が進まず、空き家が増える要因の一つとなっている。新制度で遺言を残す人が増えればトラブルが減る効果が見込める。

「終活税制」が本格的な検討に入ることで、配偶者控除など家族の在り方をめぐる税制議論全般に影響を与えそうだ。

 この動きは,相続時精算課税制度,直系尊属からの住宅取得等資金の贈与の非課税制度,子ども版NISAなどと軌を一にしていて,被相続人の生前から相続に向けた動きを取るよう政策的に誘導するものだろう。キーワードは,「資産の世代間移転」である。

 ただ,遺言控除ができたからといって,単に遺言を作ればお得になるという意識でやっていると,落とし穴があるのではないだろうか。相続税が課税される可能性のある人は,保有資産を分析し,どの制度・手段を用いるのかじっくり検討した上で進めたほうがよさそうだ。

 相続税を軽くするという手法で,遺言がもっと作成されるように政策的な誘導がなされるようになれば,特定の相続人が主導して被相続人に遺言を勧めるケースも,もっと増えるだろうと思う。そのような場合には,作られた遺言をめぐっての争いにも発展しやすい。死んだ後になって,被相続人の財産をめぐって,故人の真意を立証し合う争いが起きるわけであり,遺言を作らなかった場合に比べ,根の深い争いになりやすい。紛争になってしまうと,節税どころの話ではなくなってしまう。

 弁護士・税理士といった専門家と協議の上,遺言の利用を含めて資産継承の計画表を作り,被相続人と複数の相続人で認識を共有することができれば,ほぼ万全になるだろう。これは,被相続人の生前,それも意識障害の問題が生じる前にやるべきことだ。

 私も,弁護士として,自らの知識を深め,または他の専門家と連携して,税制を踏まえて「相続・資産継承」全体へのアドバイスをしていきたい。

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山岸 陽平
金沢法律事務所(石川県金沢市)を主宰する弁護士

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