村田のエラーになるのはやはりおかしいのでは

今日は野球のルール&ジャッジメント&記録のお話。

5月4日のプロ野球、巨人広島戦(マツダスタジアム)。9回裏、2対2の同点で迎えた広島の攻撃は一死満塁。走者1人が生還すれば試合終了の場面。投手はマシソン。一塁走者會澤、二塁走者天谷、三塁走者野間。打者は小窪。

小窪はマシソンの2球目を打ち、ボールはバットに当たったが、高く打ち上がってしまった。相当高く上がるフライになったが、誰が見ても、落下点はピッチャーのマウンドより手前のところ(むしろキャッチャーに近いところ)になりそうだった。

三塁手村田と一塁手フランシスコが捕球しようと走ってきた。しかし、2人の連携が取れず、お見合いをしてしまい、落球。どちらかというと、村田が捕球しようとしていたところをフランシスコが邪魔したような形だった。フランシスコが拾うと、球審福家は、フェアの判定。

三塁走者野間は、その状況を見て、ホームに向かって走ってきた。

ボールを持っているフランシスコは、ホームベースを踏んだ。球審福家は、三塁走者フォースアウトの判定。

フランシスコは、ホームベースに駆け込んでくる野間から意識を離し、打者走者をアウトにできないか一塁のほうを向いた。野間は、その間に、一応ホームベースを踏んだ。

 

このプレー(判定)について、広島ベンチは、抗議した。インフィールドフライだったのだから、ホームはタッチプレイになるはずで、野間がタッチされずにホームベースを踏んだ以上、得点が認められるべきだということだ。公認野球規則においてインフィールドフライ(・イフ・フェア)はこのように定められている↓

2・40 『インフィールドフライ』
無死または1死でランナーが1・2塁、1・2・3塁にあるとき、バッターが打った飛球(ライナー及びバントを企てて飛球となったものを除く)で内野手が普通の守備行為をすれば捕球できるものをいう。この場合、ピッチャー、キャッチャー及び外野手が内野で前記の飛球に対して守備したときは、内野手と同様に扱う。審判員は、打球が明らかにインフィールドフライになると判断した場合には、ランナーが次の行動を容易にとれるように、直ちにインフィールドフライを宣告しなければならない。また打球がベースラインの近くに上がった場合にはインフィールドフライ・イフ・フェアを宣告する。インフィールドフライが宣告されてもボールインプレイであるから、ランナーは離塁しても進塁してもよいが、そのフライが捕らえられればリタッチの義務が生じ、これを果たさなかった場合には普通のフライの場合と同様アウトにされる恐れがある。たとえ審判員の宣告があっても、打球がファウルボールとなれば、インフィールドフライとはならない。
「付記」インフィールドフライと宣告された打球が、最初に(何物にも触れないで)内野に落ちても、ファウルボールとなれば、インフィールドフライとはならない。またこの打球が、最初に(何物にも触れないで)ベースラインの外へ落ちても、結局フェアボールとなれば、インフィールドフライとなる。
「原注」審判員はインフィールドフライの規則を適用するにあたって、内野手が普通の守備行為をすれば捕球できるかどうかを基準とすべきであって、例えば、芝生やベースラインなどを勝手に境界線として設定すべきではない。たとえ、フライが外野手によって処理されても、それは内野手によって容易に捕球されるはずだったと審判員が判断すればインフィールドフライとすべきである。インフィールドフライはアピールプレイであると考えられるような要素はどこにもない。審判員の判断が優先し、その決定は直ちに下さなければならない。インフィールドフライが宣告されたとき、ランナーは危険を承知で進塁してもよい。インフィールドフライと宣告された飛球を内野手が故意落球したときは6・05(l)の規定にもかかわらずボールインプレイである。インフィールドフライの規則が優先する。
インフィールドフライが宣告されたときに妨害が発生した場合、打球がフェアかファウルかが確定するまでボールインプレイの状態は続く。打球がフェアになれば、野手の守備を妨害したランナーと、バッターがアウトになる。打球がファウルになれば、野手の守備を妨害したランナーだけがアウトになり、その打球がキャッチされたとしても、バッターは打ち直しとなる。
「注」インフィールドフライは、審判員が宣告して初めて効力を発する。公認野球規則 下線は引用者 参考:セットポジション

このルールに照らすと、小窪の打球は明らかにインフィールドフライ(・イフ・フェア)とされるべき打球である。

しかし、球審福家の動きは、インフィールドフライ(・イフ・フェア)のものではなかった(インフィールドフライの場合には、打者走者がアウトになるために一塁・二塁・三塁走者の進塁義務が生じないので、ボールを持った野手がホームベースを踏んでも三塁走者はアウトにならない)。

実際、球審福家は、広島ベンチの抗議を受けた当初は、三塁走者野間がアウトだと述べていたようだ。しかし、三塁塁審(責任審判)の丹波がホーム付近にやってきて、三塁塁審と二塁塁審の嶋田がインフィールドフライを宣告していたから、小窪のフライはインフィールドフライであり、小窪はアウト、野間はタッチされずにホームに生還していると述べたので、球審福家も小窪の打球がインフィールドフライであったことを前提に広島の得点を認めた。

これにより、広島が9回裏に1点を挙げ、サヨナラ勝ち・ゲームセットとなった。

この判定には、巨人の原監督が納得いかず、球審によるインフィールドフライの宣告がなかったことについて抗議したが、判定は覆らなかった。

このプレーの公式記録がどうなったかというと、打者小窪は三塁手へのインフィールドフライで凡退、そして、三塁手村田のエラーがあって三塁走者野間が生還ということになったようである。

しかし、この記録は正しく実態を反映していないと思う。仮に落球の責任がほぼ専ら村田にあるとしても、である。

その理由として、野間をアウトにできなかったことについて、村田の落球の影響は実質的にないし形式的にも影響が遮断されているということが挙げられる。フランシスコがボールを拾った段階でプレーは次の段階に移っているし、フランシスコがボールを拾ってから野間にタッチしようとすれば容易にできたはずで、そこから先は村田の行動や判断の問題ではないからである。

そこで、公式記録上、村田のエラーが記録されているのはおかしいというのが私の考えである。

達川のインフィールドフライ事件のとき、達川のエラーがついたのは、ノーバウンド捕球できるところをワンバウンド捕球したという理由ではなく、三塁走者へのタッチを怠った(ホームベースを踏んだだけだった)ことが理由だったはずである。

そうすると、今回エラーがつくのは一塁手フランシスコとなるべきだろう(場合によっては盗塁が記録されてもおかしくないとも思うが)。

 

そして、このプレーで野間のボーンヘッドを指摘する意見もあるようだ。確かに、フランシスコが野間にタッチしていたら、野間はアウトになっていたことになる。

しかし、普通は、このケースで、球審が捕球or落球までにインフィールドフライ(または、イフ・フェア)の宣告をするのが当然なので、それがなかったときに三塁走者に進塁義務が生じたと考えて本塁に向かって走った判断は責められないように思う。むしろ、インフィールドフライがアピールプレーでないことをよく踏まえて行動したと評価されるべきだろう。

審判たちは、球審がインフィールドフライであることをもっとわかりやすく示すべきだった、と反省の弁を述べているようだが、球審のジャッジをよく見れば見るほど誤ったプレーをしてしまうことになっていたわけであり、本当のところは、わかりやすいかどうかという問題ではなく球審の判断が根本的に誤っていたということだろう。

 

※ 後日,ほぼ同旨のことをお書きになっているブログを発見。むしろ,そっちのブログほうがわかりやすく書かれているかも。5/19追記

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山岸 陽平
金沢法律事務所(石川県金沢市)を主宰する弁護士

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