刑事控訴審で「1項破棄」判決をいただきました

一審判決破棄(減刑)

先月(2016年9月)、わたしが国選弁護人に指名されていた刑事控訴審(名古屋高裁金沢支部)の判決がありました。

詐欺罪の被告人です。やったことは認めていますが、量刑が重すぎるのではないかということで控訴したということでした。

事件によっていろいろな争い方がありますが、認めている事件の場合には、不適正な処分が維持されるのは被告人の更生のために、ひいては社会にとってもよくないので、被告人の言い分を法的に構成して、さらにできる弁護活動をやり、裁判所に言い分を聞き入れてもらえるよう努力するのが弁護人の役割です。

もちろん、指名されて初めて事案を知り、被告人ともそこから打ち合わせて、「控訴趣意書」を作り、同時並行で、さらなる弁護活動を進めていきます(認めている場合でも、一審段階で被害弁償や示談ができていなかった場合などは、短期間でそれらを試みることがあります)。

今回は、地裁判決(一審判決)の理由付け・考え方が誤っていてその結果量刑が不当に重くなっているということと、仮に一審判決の量刑が許容範囲だとしても一審判決後に被害回復・反省をさらに進めた・試みたという、大まかに言って2つの主張・立証をしました。

その結果、控訴審判決は、「弁護人の論旨の1つめの方に理由がある」とのことで、一審判決を破棄し、懲役期間を減らしました。

「1項破棄」とは

控訴審(高等裁判所)が一審判決を破棄する理由は、刑事訴訟法という法律に定められています。

大きく分けると、 <1> 一審判決に法令違反・事実誤認・量刑不当があるようなとき、 <2> 一審判決後に量刑に影響を及ぼすような情状が生じたために一審判決を破棄しなければ明らかに正義に反するようになったとき です。

<1>は刑事訴訟法397条1項に、<2>は刑事訴訟法397条2項に定められています。そのため、裁判官、弁護士など法律関係者は、<1>のことを「1項破棄」、<2>のことを「2項破棄」と呼んで区別しています。

「1項破棄」は、シンプルに言えば、一審判決が誤っていた、ということですが、今回そういう判断になったわけです。

今回の裁判は認めている事件で争点は「量刑」(共犯者との役割・関係を含め)だけでしたし、地裁の裁判官は刑事事件における量刑判断のプロではあるのですが、誤りはありうるということでしょう。そのため、こうして是正を図る控訴審や、そこでの弁護活動にも意義があるものと思います。

先日ご紹介したように、民事の控訴審でも一審判決と逆の結論が出されることもあったりで、考え方・見方・注意の払い方、話の組み立て方、証拠による証明の仕方などによって、判断に大きく影響するものだなと思います。