むしろ、以前の日本社会が家族依存型だった、という観点

日経新聞3018年9月24日朝刊3面「エコノフォーカス」。「単身・無職が最多 しぼむ4人家族」「世帯統計、政策前提崩れる」との見出しである。

70年続いている総務省の家計調査は、標本調査であるが、その標本(9000世帯)は夫婦と子ども2人の「標準世帯」を含む2人以上世帯が9割以上を占めており、単身は約750件で8%だという。

しかし、国勢調査では、単身世帯は2015年に1840万世帯で、世帯全体の35%を占めている。そのため、実際と乖離が生じているのではないか、ということである。

社会保障においては、こうした統計のとり方の悪影響はさらに深刻で、単身で収入が少ない高齢者の問題が見過ごされがちになるという。

みずほ銀行情報総研の藤森克彦氏は、「単身・無職を少数派と考えず、家族依存型の社会保障を見直さないといけない」と話す。


【感想】

日経新聞本紙にはグラフが載っているが、1人世帯や2人世帯で、有業者がいないという世帯の増え方は、ここ40年余りで劇的である。それぞれ、全体における割合で、4倍以上、6倍以上になっている。

他方で、「標準世帯」の代表格である、4人家族のうち1人だけが有業者だという世帯の割合も、全体における割合で、3分の1以下になっていて、減り方が劇的である。

これまで、日本社会は、家族や親類で支え合い、もたれあって、大黒柱の男性の収入によって、個々の収入が少ない人の生活を支えてきた。

それが崩れ、家族に「生活保障」を依存していた人たちが社会に溢れ出している状況である。

「8050問題」といって、80歳代の親が50歳代の子どもの生活を支えるという形態の多発が問題になってきており、「そのような状態を許していいのか?」という見方をしがちであるが、これは「大黒柱」が老朽化してもそれに頼ってやっていくことでなんとかしのげるという前提での状況であり、こんな状況は何十年も続きようがない、過渡期特有の事態なのではないかと思われる。

「不正義」といえばかなり「不正義」であるが、子どもが親の年金で食べていくことによって、社会にとっては、もろに子ども個々の生活全体を保障しなければならない事態を回避できているということになる。その意味で、いびつではあるが、まだ、家族依存型でぎりぎりやっている。

しかし、今後、社会で支える方向にすんなりと切り替わるようにも思い難い。将来や老後への備えについての意識の差が大きく、不公平感が生じやすい。

年金という緩衝材がごく薄くなっていくことが予想される中、日本社会は正念場を迎える。

当事務所:土日祝日の刑事弁護態勢

土曜・日曜・祝日の刑事弁護のご依頼について

当事務所(金沢法律事務所、弁護士山岸陽平、金沢弁護士会所属)は、弁護士1名の事務所です。石川県内の他の法律事務所と同様、土曜・日曜・祝日を定休としております。

しかし、土曜・日曜・祝日においても、石川県(特に金沢市)付近で逮捕や勾留された方のご親族などからご要請があれば、私選弁護のお引き受けをできる場合がありますので、そうしたご事情がおありの方は、金沢法律事務所の電話(076-208-3227)にお電話をお願いします。

※ 転送対応ですので、都合により電話に出られないことがあります。また、非通知または携帯電話からの折り返し電話をする場合もあります。その日ごとの事情により、対応できないこともありますので、ご了承下さい。

年末年始につきましても、できるだけ対応します。

費用は事案によりますが、こちら(当事務所ウェブページ)を参考になさって下さい。

※ 距離との兼ね合いで、当事務所で対応しやすいのは、石川県内では、金沢中警察署、金沢東警察署、金沢西警察署(以上、金沢市)、白山警察署(白山市・野々市市)、寺井警察署(能美市・川北町)、小松警察署(小松市)、津幡警察署(かほく市・津幡町・内灘町)、羽咋警察署(羽咋市・志賀町・宝達志水町)。富山県内では、砺波警察署(砺波市)、南砺警察署(南砺市)、小矢部警察署(小矢部市)、高岡警察署(高岡市・射水市一部)。というあたりですが、それ以外の警察署の案件にも対応できることがあります。

※ 勾留された人(被疑者)は裁判所に国選弁護人の選任を求めることができる場合もあります(詐欺、傷害、窃盗、強盗、恐喝、強制わいせつ、自動車運転致傷、違法薬物使用等は被疑者国選対象です。住居侵入、暴行、脅迫、器物損壊等は被疑者国選対象ではありません。)。いずれにしても、逮捕直後(1~3日間程度)の段階では国選弁護人は選任されません。

 

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【今後の抱負】社会福祉士試験に合格しました

このたび、社会福祉士国家試験に合格しました。

弁護士が携わる問題には、随所に「社会福祉」が関わってきます。特に、成年後見など高齢者障害者についての問題、子どもの問題などにおいてです。しかし、弁護士になるまでの勉強では、社会福祉の制度・歴史・考え方・現状を専門的に学ぶわけではありません。実務を通じて知ること・必要に応じて勉強することが多かったわけです。ある程度まとまった形で勉強をしたいと思い、レポート学習や試験勉強に取り組んでいました。

福祉施設での実習(フルタイム23日間)や演習では、高齢者などサービス利用者との面接技法やケアプランを学びました。特に、実習は、前の勤務先を退職して新事務所を設立するタイミングと同時並行でやっていたので、かなり大変でしたが、価値ある経験になりました。弁護士としての仕事の中でも活かしたいと思っています。

社会福祉士の資格者だけができる「独占業務」はありません。一般的には、福祉施設・社会福祉協議会・行政・病院などで働く方が取得する「プラスアルファ」の資格として考えられていますが、活かし方にはバリエーションがあります。

私は、今後も、仕事の軸足は「弁護士」に置き、一般的な訴訟や会社法務も含め、引き続き取り組んでいきます。成年後見など高齢者にかかわる仕事にはさらに力を入れていきます。その中で、社会福祉の知識や技能を取り入れていきたいと思っています。社会福祉の分野に限らずですが、さらに勉強の範囲を広げ、深めていきたいと思います。

社会福祉のあり方は社会にあり方そのものに直結します。日本では、社会のあり方や制度についての議論が足りないまま、仕組みが作られることが多いと思っています。知識を弁護士としての個々の業務に活かすだけではなく、社会のあり方、公の制度のあり方について発言をし続けていけるよう、努力を重ねていきたいと思います。

雑記 「柿木畠水掛け神輿」

開業からしばらく経ち、やや落ち着いてきました。
ただ、事務所の整備とか物品の買い入れがようやく一段落したというようなところであり、未処理になっている「やりたいこと・考えたいこと」は多くあります。
ウェブ上の発信もその一つで、まだ思い描いていたところまでは来ていません。
もっと相談のしやすい環境づくりを実現するため、取り組みを進めようと思っています。

6月中旬以降、眼や目の周りの腫れ・かゆみ、鼻の奥の痛み、中耳炎、外耳炎、顎痛、頭痛、体のだるさなど、次々と出現しましたが、なんとか頑張って立ち直りつつあります。
特に5月・6月とにかくいろいろ同時並行で進めたのと、食生活がおろそかになっていたことが影響しているかなと思います。
私は、これまであまりお医者さんには行かないほうでした。自分で何とかできるのかなと思っていました。ただ、だんだんと自分でもわかってきたのですが、どうも、私が「つらい」と言い出しているときには、医学的にはけっこうひどい状態にまでなっている傾向があるようです。そういう状況になって、寝てしばらくしても治らずに我慢ができなくなってから対処をするというのは問題があるかなと思うようになってきました。

それで今回は、自分なりには「さすがにつらい」となってから早めに病院に行きましたが、それでもまだ人から見ると遅いようです。眼科も耳鼻科も、ひどさの山に達した後に行きましたので、遅いのだと思います。
自分がつらさを我慢していればいいというだけではなく、自分のパフォーマンスが十全に発揮できない他の方にご迷惑をおかけしてしまうとも思うので、今後さらに自分のメンテナンスに気を遣うようにしたいと思います。

今日は日曜ですが、事務所の整備などで事務所に来ています。
金沢法律事務所のある香林坊・広坂・柿木畠・片町付近は、土日祝にイベント・お祭りが多いです。
ですので、9階にある事務所からそれらを眺めることができます。

今日、2016年7月24日は、柿木畠で、「第10回 柿木畠水掛け神輿」が開催されていました。

事務所から見える風景
事務所から見える風景
2016年7月24日 柿木畠商店街のお祭り
2016年7月24日 柿木畠商店街のお祭り

百万石通り(香林坊交差点~広坂交差点)の側でのイベントが多くて、柿木畠を行列が通るのは珍しいです。柿木畠は、地名も街の雰囲気も趣があり、いくつもいい店がありますから、より存在感が高まるとよいですね。

おそらく規定があるのだと思うのですが、金沢法律事務所の近辺では、平日は、音を出すイベントは開催されないようです。ですので、街の中ですが、平日は相談も執務も、静かな環境の中でできています。
現在、基本的にはご相談は平日にしておりますが、将来的に土日祝のご相談をするとすればどのように環境を作っていくか、課題はあるかもしれません。

金沢法律事務所、はじまりました。

金沢法律事務所、はじまりました。

香林坊交差点の近くのビルにあります。

まだまだ慌ただしいですが、だんだんと情報発信をしていきたいと思います。

事務所のウェブページは、BengoKanazawa.jpですが、内容はまだ未整備です。これから頑張ります。

金沢法律事務所入口
金沢法律事務所入口
金沢法律事務所サイン
金沢法律事務所サイン

近時の状況(今年は大きく変わります!)

更新ができていません。書きたいことはちょくちょく思い浮かんでいるのですが、こういうのは習慣と意欲ですね…。

以前シリーズ化しようと思ったものもそのままですね。特に、選挙制度(投票価値)については、弁護士になる前から私なりにいろいろ調べていて、私なりにアクションを起こしたい気持ちを持って今年を迎えたのですが、これは1人で片手間では簡単なことではないですね。諦めてはいませんが。
大まかに言うと、私は、国政選挙は極力投票価値を等しくすべきであり、最大格差を無理矢理縮めて急場をしのぐという現在のやり方は論外だと思っています。都道府県など地方公共団体ごとの権利を主張して投票価値の原則の修正を図る(挙げ句にはそのための憲法改正を主張する)のも違うと思います。ちなみに、選挙制度の改正の際には、人気取りのために定数削減を言う政治家が多いですし有権者が呼応しやすいのですが、定数削減の議論が延々となされているのもおかしくて、適正な人数や制度の議論であるべきです。

他には、相続・遺言について、現在どのような制度になっているかわかりやすくご紹介したうえで、現在国会や政党で議論されている法改正についてはしっかり追っていかなければいけないと思っています。ふつうに、まっとうに生きている人が、自分で何かを引き起こしたわけでもないのに遭遇してしまう法律問題ですが、知っているか知らないかで差がつくことも多いので。

今年は、私の執務態勢が大きく変わる予定です。
2016年4月~6月上旬は新態勢の諸準備や研修受講などがあるため、新しい案件・ご相談の受任が困難です。また、私は、5月・6月は事務所にいないことがかなり多いと思います。ご迷惑をお掛けします。ご依頼中の案件は責任を持って取り組みます。
6月半ばころには金沢でバリバリ復帰する予定ですし、皆さんに知ってもらいたいと思うので、ウェブ上でも新態勢を展開していきます。

北陸新幹線ルート問題について

北陸新幹線は、2015年3月に東京・金沢間が開業しましたが、今後、2022年度に福井県の敦賀まで開業するということです。
しかし、その先の大阪へのルートがまだ決まっていません。

もともとの北陸新幹線の計画(1973年)では福井県の小浜を通るとされていて、そこから京都府の亀岡を通り、新大阪まで行くというふうに考えられていました。
また、それとは別に、北陸から琵琶湖東岸を通って名古屋に行くという、北陸・中京新幹線計画というものもありました(これは立ち消えに)。

その北陸新幹線の計画に基づいて小浜を通るルートを「小浜ルート」とか「若狭ルート」といいます。

「小浜ルート」の主な難点は、建設費が高いこと、建設に時間がかかりやすいこと、京都市に駅を作れないこと、名古屋へのアクセスもよくないことなどです。

そこで、別の案として、琵琶湖の西岸を通って京都駅付近で東海道新幹線に接続する「湖西ルート」や滋賀県の琵琶湖東岸の米原駅で東海道新幹線に接続する「米原ルート」が提唱されているところです。

「湖西ルート」の主な難点は、建設費が安くはないこと、強風により運行に支障が生じやすいこと、京都での接続に難があること、名古屋へのアクセスがあまりよくないこと、滋賀県がJR湖西線の第三セクター化に難色を示すことなどです。

「米原ルート」の主な難点は、JR東海の運営する東海道新幹線への乗り入れが非常に困難であること(当初は米原での乗り換え等が発生しかねないこと)、大阪・京都への速達性がやや失われることなどです。

これらの案には一長一短あり、またそれぞれの短所がなかなか厄介な問題であるところ、いずれの案にも決まらないままになっています。

そこへ、今年8月になって、JR西日本が「小浜・京都ルート」を新たに検討し始めました。
想像ですが、JR西日本としては、東海道新幹線への乗り入れや接続ということはとにかく避けたいということなのでしょう。
そして、北陸の人々にとっては、京都駅へのアクセスというのがかなり大きな要素でしたので、その意味で従来の「小浜ルート」の難点がかなり解消される案になっています。
ただ、京都駅以南の路線整備にかなりのコストがかかる(従来の小浜ルート並みかそれ以上になる)上、路線が曲がるので時短効果が薄れるというところがあります。

運営主体となるJR西日本が持ち出してきた案であり、JR東海との調整を避けられる可能性があること、京都・大阪へのアクセス重視をする人たちの意向におおむね合致すること、関西自治体の利害にも合うことなどから、最有力に急浮上してきた案であるように思われました。

さらには、京都府選出の西田参院議員も、小浜・京都ルートを前提として、関空へのアクセスについてのさらなる構想を語るなど、かなり勢いがついてきた感があります。

石川県議会は、2015年の10月に、「米原ルート」に早期決定するよう国に求める決議をしたのですが、石川県民が大阪方面に行く場合に敦賀どまりになる期間を短くしたいというところからの発想のように思えます。これは近視眼的であるといえますし、JR西日本が小浜・京都ルートを提示した後でしたので、時期外れのナンセンスなものになってしまいました。
この石川県議会の決議では、米原ルートに特定しない案も少数会派から出されており、通常はそれを先に審議するルールになっているところ、多数会派はその審議をとばしてまでも「米原ルート」を決議してしまいました。

石川県が今後、「米原ルート」を実現したいのであれば、福井県・富山県と共同歩調を取り、JR西日本やJR東海を説得することが必要でしょうが、そのようなことはまずできないでしょう。

私としては、小浜・京都ルートは妥協案ではありますが、妙案という評価ができるように思います。政治的にも「地雷」をうまく回避できており、さらに関西の意欲を引き出すことの可能な案です。福井県はもちろん前向きでしょう。それに、富山県も、現在金沢乗り換えという不都合を味わっている中で、今後敦賀乗り換え→米原乗り換えということになるよりも、再び一本で京都や大阪へ行けるようになる希望を持ちたいと思うでしょう。そして、最もカギになるのは、先ほど述べたJR西日本の意向です。
よって、今後、小浜・京都ルートへの趨勢が強まっていくでしょう。
そのような中で、北陸各県は、これまでの持論を差し置いて、小浜・京都ルートを前提とした(またはそれを強く推進させるような)動きを取ることがよいのではないかと思うのですが、どうでしょうか。

「新しい弁護士活用法」

私がよく読んでいるブログの一つに、「アメリカ法曹事情」というものがある。

このブログは、文字通り、アメリカの法曹事情を紹介し、そのうえで、かなり率直に日本の法曹界の現状・今後についても述べているので、参考になる。
そのブログの「新しい弁護士活用法?」というエントリ(2015年5月23日)は、興味深い。
要するに、国会議員秘書を増やし、弁護士枠をつくるという案である。

 

現実的な目で見ると、財政的な問題と、立法作業のできる弁護士の育成の問題はある。しかし、方向性としては賛成できる。

理由1 現状で国会議員の法案立案能力が高いとはいえない(法案の立案に使える資源の量も不足している)

#各省庁の官僚が中心となって用意する法案はもちろん法律としての体裁が整っているし、行政運用の安定にも資するが、必ず各省庁の案がベスト・ベターだというわけでもないはず。そのようなとき、国会議員からも案を出せるようになっていることが望ましい。また、従前とは異なる観点から法案を作っていくときには議員立法によることも多いが、立案能力の向上により、議員立法が活性化し、新しい発想を生かせる場面が増える。

##大まかに言うと、国会では、「対案出してみろ」的なことを与党が言って、野党がパッチワーク的な案を出し、微妙なところで妥協して成立させるということが行われている印象をもっていますが、背骨のある野党案を期待したいところなんですよね…。

理由2 もっと世間のためになるような場所に弁護士を増やしては?

#弁護士の数が急激に増えている昨今だが(自分も含めてだが)、弁護士の具体的な仕事のどれくらいがどのような意味で社会を向上させているのか、幸福をもたらしているのか、疑問なところがある。本質的に仕方ないことなのかもしれないが、「限られたパイの取り合い」に終始している感が強い。お客様「各自」の向上が基本である。確かに、それもそれとして重要なことはもちろんだけれど、そういう個対個(会社であってもその意味では「個」)に知恵を振り絞る役目の人ばかり増やすのではなく、もっと力を注ぎ知恵を振り絞ることで国や地域が向上していけるようなところに人を配置したほうがいいのではないか。

 

なお、以下は余談…。

国として、弁護士をどう活用するのか、ビジョンがちゃんとしていないままここまで来てしまっている感があって、そんななか、みんなが弁護士とすぐ・気軽に相談できるようにするのが理想だから各地域に細かく分散させて配置しようというような流れにある。しかし、本当にそうやって人数をとにかく増やして配置を進めていくことがみんなの幸せにつながるのか、私は実のところ疑問を持っている。相当程度お金を払ってまで法的にもめ事を解決してもらいたい、という需要がそこまで散在しているのかどうか…。それに、需要があったとして、介入していくことで幸せにつながらないようなものも多いだろう。根の深いご近所トラブルとか…。

本質的にたくさんの需要が散在している(多くの人が持っている願い)とすれば、もっと生活を便利にしたいとか、精神的にもあたたかく充実した生活を送りたいとか、物質面で恵まれたいとか、さまざまな趣味や楽しみに取り組んで文化的に暮らしたいとか、平和・安全に過ごしたいとか、そういうものだと思う。そして、この種の需要というのは、政治的な側面(非常に大雑把に言うと、自分のところに公的なお金を入れてくれ、みたいな話とつながる)もあるし、民間の営利活動によって叶っていくという面もある。

私は、そういう需要(需要の実現だけではなく、利害調整も含め)に応えたいとか、役立ちたいという思いは強くある。役立つための役回りは、いろいろあるだろうとは思う。

なお、上述の議員立法を担う国会議員秘書なんていうのも、そういう意味での役回りだろう。でも、ちらほらと入っていくだけではあまり意味がない。ちゃんと抜本的に制度化しないと、個々の頑張りも焼け石に水になる。

私自身は、まだ漠然としているところもあるけれども、どのようにすることが社会の役に立つのか、いかにすれば本質的な意味で役立つ人として活用してもらえるようになるのか、さらに模索していきたい。

村田のエラーになるのはやはりおかしいのでは

今日は野球のルール&ジャッジメント&記録のお話。

5月4日のプロ野球、巨人広島戦(マツダスタジアム)。9回裏、2対2の同点で迎えた広島の攻撃は一死満塁。走者1人が生還すれば試合終了の場面。投手はマシソン。一塁走者會澤、二塁走者天谷、三塁走者野間。打者は小窪。

小窪はマシソンの2球目を打ち、ボールはバットに当たったが、高く打ち上がってしまった。相当高く上がるフライになったが、誰が見ても、落下点はピッチャーのマウンドより手前のところ(むしろキャッチャーに近いところ)になりそうだった。

三塁手村田と一塁手フランシスコが捕球しようと走ってきた。しかし、2人の連携が取れず、お見合いをしてしまい、落球。どちらかというと、村田が捕球しようとしていたところをフランシスコが邪魔したような形だった。フランシスコが拾うと、球審福家は、フェアの判定。

三塁走者野間は、その状況を見て、ホームに向かって走ってきた。

ボールを持っているフランシスコは、ホームベースを踏んだ。球審福家は、三塁走者フォースアウトの判定。

フランシスコは、ホームベースに駆け込んでくる野間から意識を離し、打者走者をアウトにできないか一塁のほうを向いた。野間は、その間に、一応ホームベースを踏んだ。

 

このプレー(判定)について、広島ベンチは、抗議した。インフィールドフライだったのだから、ホームはタッチプレイになるはずで、野間がタッチされずにホームベースを踏んだ以上、得点が認められるべきだということだ。公認野球規則においてインフィールドフライ(・イフ・フェア)はこのように定められている↓

2・40 『インフィールドフライ』
無死または1死でランナーが1・2塁、1・2・3塁にあるとき、バッターが打った飛球(ライナー及びバントを企てて飛球となったものを除く)で内野手が普通の守備行為をすれば捕球できるものをいう。この場合、ピッチャー、キャッチャー及び外野手が内野で前記の飛球に対して守備したときは、内野手と同様に扱う。審判員は、打球が明らかにインフィールドフライになると判断した場合には、ランナーが次の行動を容易にとれるように、直ちにインフィールドフライを宣告しなければならない。また打球がベースラインの近くに上がった場合にはインフィールドフライ・イフ・フェアを宣告する。インフィールドフライが宣告されてもボールインプレイであるから、ランナーは離塁しても進塁してもよいが、そのフライが捕らえられればリタッチの義務が生じ、これを果たさなかった場合には普通のフライの場合と同様アウトにされる恐れがある。たとえ審判員の宣告があっても、打球がファウルボールとなれば、インフィールドフライとはならない。
「付記」インフィールドフライと宣告された打球が、最初に(何物にも触れないで)内野に落ちても、ファウルボールとなれば、インフィールドフライとはならない。またこの打球が、最初に(何物にも触れないで)ベースラインの外へ落ちても、結局フェアボールとなれば、インフィールドフライとなる。
「原注」審判員はインフィールドフライの規則を適用するにあたって、内野手が普通の守備行為をすれば捕球できるかどうかを基準とすべきであって、例えば、芝生やベースラインなどを勝手に境界線として設定すべきではない。たとえ、フライが外野手によって処理されても、それは内野手によって容易に捕球されるはずだったと審判員が判断すればインフィールドフライとすべきである。インフィールドフライはアピールプレイであると考えられるような要素はどこにもない。審判員の判断が優先し、その決定は直ちに下さなければならない。インフィールドフライが宣告されたとき、ランナーは危険を承知で進塁してもよい。インフィールドフライと宣告された飛球を内野手が故意落球したときは6・05(l)の規定にもかかわらずボールインプレイである。インフィールドフライの規則が優先する。
インフィールドフライが宣告されたときに妨害が発生した場合、打球がフェアかファウルかが確定するまでボールインプレイの状態は続く。打球がフェアになれば、野手の守備を妨害したランナーと、バッターがアウトになる。打球がファウルになれば、野手の守備を妨害したランナーだけがアウトになり、その打球がキャッチされたとしても、バッターは打ち直しとなる。
「注」インフィールドフライは、審判員が宣告して初めて効力を発する。公認野球規則 下線は引用者 参考:セットポジション

このルールに照らすと、小窪の打球は明らかにインフィールドフライ(・イフ・フェア)とされるべき打球である。

しかし、球審福家の動きは、インフィールドフライ(・イフ・フェア)のものではなかった(インフィールドフライの場合には、打者走者がアウトになるために一塁・二塁・三塁走者の進塁義務が生じないので、ボールを持った野手がホームベースを踏んでも三塁走者はアウトにならない)。

実際、球審福家は、広島ベンチの抗議を受けた当初は、三塁走者野間がアウトだと述べていたようだ。しかし、三塁塁審(責任審判)の丹波がホーム付近にやってきて、三塁塁審と二塁塁審の嶋田がインフィールドフライを宣告していたから、小窪のフライはインフィールドフライであり、小窪はアウト、野間はタッチされずにホームに生還していると述べたので、球審福家も小窪の打球がインフィールドフライであったことを前提に広島の得点を認めた。

これにより、広島が9回裏に1点を挙げ、サヨナラ勝ち・ゲームセットとなった。

この判定には、巨人の原監督が納得いかず、球審によるインフィールドフライの宣告がなかったことについて抗議したが、判定は覆らなかった。

このプレーの公式記録がどうなったかというと、打者小窪は三塁手へのインフィールドフライで凡退、そして、三塁手村田のエラーがあって三塁走者野間が生還ということになったようである。

しかし、この記録は正しく実態を反映していないと思う。仮に落球の責任がほぼ専ら村田にあるとしても、である。

その理由として、野間をアウトにできなかったことについて、村田の落球の影響は実質的にないし形式的にも影響が遮断されているということが挙げられる。フランシスコがボールを拾った段階でプレーは次の段階に移っているし、フランシスコがボールを拾ってから野間にタッチしようとすれば容易にできたはずで、そこから先は村田の行動や判断の問題ではないからである。

そこで、公式記録上、村田のエラーが記録されているのはおかしいというのが私の考えである。

達川のインフィールドフライ事件のとき、達川のエラーがついたのは、ノーバウンド捕球できるところをワンバウンド捕球したという理由ではなく、三塁走者へのタッチを怠った(ホームベースを踏んだだけだった)ことが理由だったはずである。

そうすると、今回エラーがつくのは一塁手フランシスコとなるべきだろう(場合によっては盗塁が記録されてもおかしくないとも思うが)。

 

そして、このプレーで野間のボーンヘッドを指摘する意見もあるようだ。確かに、フランシスコが野間にタッチしていたら、野間はアウトになっていたことになる。

しかし、普通は、このケースで、球審が捕球or落球までにインフィールドフライ(または、イフ・フェア)の宣告をするのが当然なので、それがなかったときに三塁走者に進塁義務が生じたと考えて本塁に向かって走った判断は責められないように思う。むしろ、インフィールドフライがアピールプレーでないことをよく踏まえて行動したと評価されるべきだろう。

審判たちは、球審がインフィールドフライであることをもっとわかりやすく示すべきだった、と反省の弁を述べているようだが、球審のジャッジをよく見れば見るほど誤ったプレーをしてしまうことになっていたわけであり、本当のところは、わかりやすいかどうかという問題ではなく球審の判断が根本的に誤っていたということだろう。

 

※ 後日,ほぼ同旨のことをお書きになっているブログを発見。むしろ,そっちのブログほうがわかりやすく書かれているかも。5/19追記

弁護士はつらいよ

ちょっと昔,「雪国はつらいよ条例」騒動というのがあり,その騒動というのは,新潟の魚沼のある自治体が制定した「雪国はつらつ条例」というのが,「雪国はつらいよ条例」として教科書に載ってしまったというものです。石川県も雪国で,冬場つらいことが多いです。雪国という言葉に明確な定義はないようですが,石川県は,雪国度において,新潟県よりは下,宮城県よりは上といったところでしょう。

それは,ともかく・・・,弁護士は,正負で言えば,負のことに関与することが多い仕事です。仕事としてやっているので,そんなものといえばそんなものです。「本人」の立場で直面するのとは,意味合いが全く異なるでしょう。負の立場に置かれた人のために仕事をして,すっきりと解決してよかったなと思うこともあれば,「負」に飲み込まれてしまいそうになることもあります。これは,「事案」にもよるし,同じような事案でも「人」の動きによるのですが。

弁護士になってしばらくは,合理的ではない行動をとりまくっている人とか,自分から厄介ごとに首を突っ込んでいく人とか,意味が分かりませんでした。「高校デビュー」とか「大学デビュー」とかいう言葉があり,それらは自分をこじらせてしょーもない自己アピールにいそしむことを指しますが,「弁護士デビュー」の場合は多くがめぐりめぐってくる事柄との遭遇により生じることなので,受け身であがく形になります。しかし,人間の心の動きには典型例があるようです。私は,いろんな種類の人たちの思考過程・思考パターンに慣れてきた気がします。

でも,最近,ここまでやる者もいるのかと思わされることがありました。一度だけ法律相談をした人が,「○○○○(その相談者)代理人弁護士山岸陽平」の名をかたって他人に振込を行い,山岸弁護士が代理人に就任しているという嘘を信じ込ませようとした,ということがあったのです。そもそも,その相談は半年くらい前で,相談者とはそれ以降会っておらず,それ以降のことを全然私は知りませんし,無関係なのです。「▲▲弁護士に相談している」とか「今,依頼をしているところだ」ということを大げさに口先で言う人はわりと多いですが,嘘を信じ込ませるためにそこまでするとは…。

少なくとも,弁護士法違反,有印私文書偽造,同行使の犯罪行為です。弁護士の立場は法律によって規律され,守られているともいえますが,こんな簡単に犯罪に巻き込まれるというのも,「弁護士はつらいよ」というところですね…。