若手弁護士の多数が自分たちのことについて積極的に発言しないわけ

若手が集まらない原因募集。弁護士法人 向原・川上総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ

 

上記ブログで,大きめの県の弁護士会(単位会)において若手弁護士が会務に無関心な傾向があり,その原因は何か?ということが論じられています。

「お金の絡む問題」であっても「お金にならない場」に若手弁護士が来ない傾向にあるようです。

 

私が所属する弁護士会(単位会)においては,現在のところ,お金にならない委員会にも相当な割合の若手弁護士が参加してボランティア的に活動しているように思います。

ただ,最初から会務にほとんど参加しない新人弁護士が昔に比べて増えてきているのと,弁護士になって10年くらい経つと会務に積極的な弁護士と消極的な弁護士に分かれるように感じます。

それに,比較的,やる気のある若手弁護士が集まって業務経験に基づいて勉強会をするなど,切磋琢磨して研鑽を積もうとしている傾向にはあると思います。

 

ですので,まだ,私自身,「若手弁護士が集まらない,議論しない」ということを実感して,その理由を実地で探っているというわけではありません。

ただ,都市部の弁護士会において,若手が会務に参加せず,さらに,弁護士の「経営」や「将来の見通し」にかかわることに関しても積極的に発言しないことについては,なんとなく私なりに思うところがあるので,少し語ってみます。

 

今の若手弁護士の世代は,同じ先鋭的な意見を持つ者たちで団結して対外的に声を挙げた,という経験のない人たちがほとんどです(私もそうです)。経験がないばかりか,周囲にそうした人たちがほとんどいなかったと言ってもいいでしょう。

若手の皆さんも,たとえば政府や自治体の政策については,個々人それなりの見識をもとに,「おかしい」とか「こうすればよい」という意見は持ち続けてきたでしょう。しかし,そうした公共政策について,自分の生活や将来を左右することとして,友人と議論して,外部に明確に意思表示をしたという経験を持つ人は多くないと思います。議論さえしたことのない人さえ多いかもしれません。私も,そういう話をできる相手は限られています。社会的なことについてそれなりの知識を持っていて,自分の頭で考えることができる人,それでいて,自分のオリジナルな意見を他人に伝えることに抵抗のない人って,あまり多くないです。

そして,若手の世代は,「いずれしっかりした形で社会に出て,悪戦苦闘しつつ職業経験を積み重ねていけば,おのずから社会的な立場を得ることができる」という実感のない世代です(少なくとも私はそう思っています)。むしろ,人と違うことをして失敗すると,経済的に将来が危うくなるという感覚を持っている人が多く,当面の選択肢が狭まっている感じがします。

さらには,世間一般を見渡して,一人で声を挙げた場合はもちろん,何人も集まって声を挙げても,その労力に比してどれだけの成果が得られているのか,ということがあります。声を挙げる過程で仲間と結束することができ,そのことで精神的な満足を得られるかもしれませんが,それは本来副産物ともいえます。自己満足で昂揚しない場合には,徒労感ばかりになってしまうのではないかということが世の中に満ちあふれています。単純に,権力に抗ったり(あらがったり),国や行政に助けてもらおうと運動しても,根本的な解決にならないのではないか,ということばかりです(きっと,以前は,そうでもなかったのではないでしょうか……)。

このように,一昔前と比べると,経済的な事情の変化から,現在の潮流を受けて育ってきた人たちは,「スタンダード」を逸脱しにくい心理になりやすいと思います。「スタンダード」を踏まえて,そのルールは前提として,その中で自分なりに頑張る,というのが染みついてしまっているのではないかと思います。

そのような状況が,若手弁護士が自分たちの将来に関わることについて発言しないことにもつながっているように私は思います。

正直言って,若手弁護士には,そんなには「しがらみ」はないはずです。ベテラン弁護士は,同期の旧友やお世話になった先輩の働きかけに応じざるを得ないことも多々あったのかもしれませんが,今はそんなものは急激に薄まっています。たとえば(たとえばですよ!),法科大学院(ロースクール)出身だから法科大学院を悪く言えないというのも,実際のところたいした圧力ではありません。ほんのちょっとした踏ん切りがあれば十分です。

皆さん,それぞれ,それなりに思っていることがあるはずです(と,私は思います)。

それでも,多くの人たちが率直に・積極的に発言しないのは,若手弁護士の世代が,そういう世代的状況(「スタンダード」は守って頑張るという方法を逸脱できない)に染まっているからなのではないかと思います。

あと,別角度から考えるとすれば,あまり率直に言わない方が営業的にイイ(むしろ甘っちょろいことを言っている弁護士を批判した方がかっこいい)というのもあるかもしれないし,情報発信力がある人は「スタンダード」の中での戦いに勝ち抜けるように仕事につながる情報発信にパワーを集中させるという傾向もあるでしょうね。まぁ,私は,それはそれで健全なんじゃないかと思ったりもしていて,若手弁護士が「弁護士」という職業の価値を守るために団結するのって本当に「公共善」なのか?と逡巡するところです。

もちろん,人のために,見返りを期待せずに頑張るということは,それだけでたいへん尊いことではあります。社会が良くなるようそれぞれの労力を注いでおられる方々には敬意を抱きます。私も,社会のために貢献したいという気持ちは強いので,頑張りどころを間違えず(これがやはり多いしもったいない),ここぞというときに奮闘したいと思っています。

2014年日弁連会長選の結果について

2014年の日弁連会長選は,2014年2月7日に投票が行われ,村越進氏が11,676票(51単位会で首位),武内更一氏が4,173票(1単位会で首位)となりました。投票率は46.65%でした。

 

この結果について,取り上げているブログがあります(まったく網羅はしていません)。

日弁連会長選挙 武内更一候補が善戦』(2月7日,猪野亨弁護士)

日弁連会長選挙には行かなかった。』(2月8日,PINE’s page)

日弁連会長選、史上最低投票率の現実』(2月10日,河野真樹氏・元「法律新聞」編集長の弁護士観察日記)

日弁連会長選挙の開票結果について』(2月12日,小林正啓弁護士)

 

この中で,分析的なのは,河野氏と小林弁護士のブログです。

河野氏は,

単独の獲得票が1万票を越したのは、今回が初めてですが、母数となる選挙人数が増員政策で年間約1600人ずつ増加しているうえに、再投票・再選挙にもつれ込んだ前回2012年の1回目の選挙で割れた、いわゆる「改革」路線派票の合計は1万票を越していることからも、注目すべきなのはやはりこちらではなく、投票率の方です。

と書いています。

また,小林弁護士は,

以上見てきたように、今回の日弁連会長選挙の開票結果は、子細に見れば注目点もあるが、全体としてみれば、史上最低の投票率という以外、何らかの傾向を読み取るべき材料を見いだすことができない。「特段新規な公約を打ち出さなかった主流派候補と、新左翼の対立候補では、勝敗は見えていた」ことが、史上最低の投票率の原因という、実も蓋もない分析結果で、お茶を濁すしかないようだ。

と書いています。

 

これらの分析を細かく見ていけば,「東京弁護士会内の最大派閥である法友会(平成22年度会員数2398人)が、集票マシンとしての実力を発揮したことを示している。」(小林弁護士),「愛知県の(投票率の)下落ぶりはすごい。だが何故かは分からない。」(小林弁護士),「前々回2010年選挙で再投票の結果、宇都宮健児氏がついに「改革」路線の執行部派候補を破り、2年間のかじ取りをしたものの、「改革」路線を大きく転換することはできず、続く宇都宮氏の続投をかけた前回2012年選挙が、前記したように再び再投票、初の再選挙にもつれこんだものの、執行部派の勝利で政権奪還します。反執行部派政権2年と、その後の会長選挙のゴタゴタは、会員の無力感と「嫌気」につながったとみることもできます。」(河野氏)といったところに,掘り下げの余地が十分あるように思われます。

東京弁護士会は,武内更一氏が東京弁護士会所属ということで,自分の会で接戦になると都合が悪いとか,そんな理由で頑張ったのかな,とか。

 

そして,私の視点(選挙マニア)を付け加えるとすれば・・・

前回・前々回,宇都宮氏に投票した票はどこへ行ったのか(前々回9,720票,前回1回目6,613票,前回2回目7,503票)ということです。

武内更一氏は前回の森川文人氏の系列の候補なので,前回の森川氏の得票1,805票がひとつの参考になります(森川氏は1回目で脱落)。そして,村越進氏は前回の山岸憲司氏の1回目得票7,964票,2回目8,570票が参考になります。なお,前回の投票率は1回目62.28%,2回目50.86%でした。

今回の村越氏は,11,676票でしたので,前回の山岸氏の2回目と比較して3,000票以上積み増ししています。対して,武内氏は,4,173票でしたので,前回の森川氏の1,805票から2,300票余りの積み増しになります。この積み増し比較は,候補者数や投票率の差を考えると,今回の武内氏にできるだけ有利になるような比較です。そんな比較でも敗北しているので,武内氏は村越氏との「旧宇都宮票」取り込み競争に敗北したといえます。

「旧宇都宮票」がいわゆる主流派批判票であったと考えるならば,武内氏はその受け皿たりえなかったということです。武内氏が髙山俊吉氏の系列であり,高山氏が投票率が2008年の選挙で7043票を獲得したことを考えると,武内氏は今回潜在的には掘り起こしえた有権者数の10%程度(約3,500人)の票を眠らせてしまったのではないでしょうか。

「勝敗が見えていたから」武内氏の得票が伸びなかったのではなく,根本的に何かが足りていなかった(または余計なことを言っていた)ので票が入らなかったと見るべきでしょう。確かに,選挙では,勝敗が見えていたから投票に行かないということもありますが,そもそもの圧勝の理由にはなりにくいです。

「旧宇都宮票」に戻りますが,これはいったい何の票だったのでしょうか? なぜ前回まで,「宇都宮を支える地方対主流派を支える東京」のような構図になっていて,今回それが雲散霧消したのでしょうか(そもそも,前回まで,何らかの政策を実現するために宇都宮氏が立候補していたとしたら,今回宇都宮氏に近い政策を実現するために立候補する人がいなかったのはなぜなのでしょうか?)。

この理由は,票数の分析だけからはわかりません。私の感覚でゆるく語るとすると,2007年の参院選・2009年の衆院選の民主党の勝利と,ターニングポイントとなった2010年の参院選,2012年の衆院選・2013年の参院選の民主党の得票の激減に近いものがあります。「とにかく政権交代を!」と言って政権に就いてみたものの,肝腎の問題を置いといてピントがずれたことをする(やってるときには,一応褒めそやされますが,だんだんとほころんできます)。そして,地力がまだ残っている派閥・土着層の巻き返しに遭う。右肩下がりになってからは,メッキが剥がれて回復困難。離脱者続出。かつて支持していたはずの有権者も,「投票したことがあったっけ?知らんなぁ」ってなもんです。それで,極端な人しか対抗馬として立たなくなるという(それも,当該選挙と直接関係のない他の政治運動の話をしたりする)。

まだ,自民党は民主党政権の反動で景気が良くなった感じを演出できたのでいいんですが,日弁連はそんなことも全くありませんし。弁護士の中に,もう日弁連には何も期待できない,と言っている人が散見されるのもむべなるかな,です(最近失望したというのなら,もともと宇都宮氏に何を期待したのか,ということも疑問として浮上しますが)。

ただ,日本の国政と日弁連の異なるところとしては,自民党がいろいろとガッチリ押さえてしまった国政に対して,日弁連は1回の選挙で浮動票で・・・という可能性がまだ大いにあるということでしょう。「宇都宮票」を構成した移ろいやすい票についても,今後全く同じような現象として再結集することはなくても,何らかの形で主流派を苦しめることがあるかもしれません。そんな意味で,近い将来もうひと山あるのではないかと予想しています。

日弁連の会長選挙に物申す?

日弁連とは何か

弁護士となる資格を有する者(主に司法試験合格者)は、弁護士業務を営むためには、日本弁護士連合会(日弁連)の名簿に登録していなければならないというきまりになっています(弁護士法8条)。

日弁連の名簿に登録してもらうためには、弁護士会に入会しなければなりません(弁護士法9条)。

弁護士会は、地裁の管轄ごとに設置することになっています(弁護士法32条)。よって、現行法規に従えば、北海道(札幌・釧路・旭川・函館)以外は各都府県に弁護士会は1つだけ、となります。ただし、弁護士法がこの規定になる前に、東京は、東京弁護士会(東弁)・第一東京弁護士会(一弁)・第二東京弁護士会(二弁)に分かれていたので、現在でも3つ弁護士会があります。

日弁連は、52の弁護士会、各弁護士会に所属する弁護士法人・弁護士たちによって成り立っている組織です。

国や行政機関に対抗していかなければならないこともある弁護士が国家機関から監督を受けると、結局最後は国家機関の意向に従わざるを得なくなるおそれがあるので、日弁連は「弁護士自治」の名のもと、弁護士の指導監督をしています。

日弁連の会長は、そのような機関の長です。会長の任期は2年で、弁護士会員の選挙により選ばれます。

日弁連の会長選挙(2014年)は一騎打ち

2014年(平成26年)の日弁連会長選は、1月8日公示、2月7日投票となりました。

候補は・・・

 

武内更一 氏(1958年1月1日生) 東京弁護士会所属

村越進 氏(1950年9月1日生) 第一東京弁護士会

 

この2名の一騎打ちです。

村越氏は現在の山岸会長と支持基盤が似通っており、竹内氏は前回会長選に立候補した森川文人氏と支持基盤がほぼ同じです。

前会長であり、前回会長選で落選した宇都宮健児氏は、なぜか東京都知事選のほうに共産党と社民党推薦で立候補して、日弁連に後継候補は立ちません←

このあたりの「支持基盤」の話は、詳しく説明をすると長くなりますので、また今度します。

両者の掲げる政策

どちらを支持するか決めるために、選挙公報に載っている政策を見比べると・・・

武内更一氏

「日弁連を再建し、弁護士の生活と人々の権利を守ろう」
弁護士つぶしの「法曹有資格者」に反対

(補足)武内氏によると、政府と法科大学院協会は、「司法改革」の中核とされた法科大学院制度の破綻状況を逆手にとって、弁護士登録をしなくても法律事務を取り扱うことのできる資格を制度化しようとしており、日弁連執行部もこの方針を容認しようとしているということです。

弁護士激増反対・法科大学院制度廃止

(補足)武内氏の考えでは、弁護士は経済的に窮乏化しており、その原因は圧倒的に弁護士激増政策にあるということです。武内氏は、法科大学院制度が存続している限り、司法試験合格者激増を止めることは不可能であると主張します。そして、法科大学院制度は、在学生に対する経過措置を設けつつ、直ちに募集を停止し、廃止すべきであるといいます。

弁護士統制と買い叩きの司法支援センターをつぶせ

(補足)武内氏は、日本司法支援センター(法テラス)が民事法律援助事件や国選弁護事件の報酬を低額に抑えていることも、弁護士の窮乏化と従属化のもう一つの要因であると主張します。武内氏は、法テラスができるまでは、弁護士会が実質的に民事法律扶助事業や国選弁護人の選任の関係の業務を指揮していたのであり、そうしたやり方に戻すべきだと考えています。

裁判員制度廃止、盗聴拡大・司法取引導入反対

(補足)武内氏は、被疑者・被告人の防御権、弁護権を回復するため、日弁連の誤った方針を転換して裁判員制度を廃止に追い込みましょう、と呼びかけています。また、現在法制審議会で盗聴の拡大・密室化、室内盗聴の容認、司法取引、匿名証人、被告人の黙秘権を認めず偽証罪適用など、刑事司法制度全般の改変が議論されている、と武内氏は言います。武内氏によると、この政府の動きに対し、日弁連は「取調べの可視化と被疑者国選の拡大を獲得するため」と称して、そうした新捜査手法に徹底反対せず、容認しようとしているとのことです。武内氏は、これを許さないと言っています。

全原発の廃炉、再稼働阻止

(補足)武内氏は、弁護士がさらに反原発の行動に立ち上がらなければならない、と言っています。

特定秘密保護法撤廃、改憲と戦争を許さない

(補足)武内氏は、安倍政権が改憲に踏み切ったと言っています。武内氏は、安倍政権に対抗する姿勢を強く見せています。

村越進氏

「ともに未来を切り拓きましょう」
司法アクセスの改善

(補足)村越氏は、弁護士は市民にとってまだまだ身近な存在とはいえないのでアクセスの改善・情報提供・広報に取り組むと言っています。高齢者、子ども、障がいのある人、外国人・難民、犯罪被害者、生活保護申請者など、社会的に脆弱な立場にある人々に寄り添った活動を強化すべきであると主張しています。民事法律扶助の拡充、権利保護保険の対象拡大、法律援助事業の公費負担に全力で取り組むと言っています。弁護士会の法律相談センターについても改革を進めると言っています。

弁護士の活動領域の拡大

(補足)市民のための司法は、弁護士が社会の隅々にまで活動領域を拡大し、社会のあらゆるニーズに応えることで実現するので、日弁連も弁護士の活動領域拡大に取り組むと言っています。中小企業への法的支援業務の推進、弁護士業務の国際化対応支援、組織内弁護士採用促進のための整備、専門分野・新たな分野での研修強化、というラインナップを挙げています。

若手弁護士への支援、日弁連活動への参加促進

(補足)村越氏は、日弁連として、「司法アクセスの改善」や「弁護士の活動領域の拡大」における各政策が想定する分野は若手弁護士の活動領域として最も期待されていると主張します。そして、これらの政策の実現に向けて、積極的に関係各機関・諸団体に働きかけ、若手弁護士が活躍する機会を提供します、と言っています。若手弁護士の声を日弁連の意思決定に反映させたり、若手弁護士の企画や立案を積極的に取り上げて実現すると言っています。

法曹養成制度の改革

(補足)社会の法的需要を適切に分析・予測しながら、見合った数の法曹を計画的に養成していくことが必要で、司法試験合格者は可及的速やかに1500人以下とし、実情に合わせ、さらなる減員をすべく全力で取り組みます、と村越氏は言っています。法科大学院については、実務法曹になる意欲と素地のある学生の確保、教員の確保のため、大幅な定員削減や統廃合を促し、これによって教育体制の充実を図るべきだと村越氏は言っています。法科大学院生の多くが、給付型奨学金制度、奨学金返還義務の免除制度などを活用できるようにすべきである、と村越氏は言っています。村越氏は、司法修習生への給費制の復活を含む経済的支援の充実のため、日弁連として総力を挙げて取り組むと言います。

司法基盤の整備と裁判所支部機能の充実・強化

(補足)村越氏は、司法基盤の整備、特に裁判官・検察官の増員が必要だと言います。裁判所の機能の充実化や司法予算の増額も求めていくと言います。

民事司法改革の推進

(補足)村越氏は、訴訟費用の低・定額化をはかり、行政訴訟制度の改革を図ると主張しています。村越氏は、集団的消費者被害回復訴訟制度が市民に利用されやすい手続となるよう努力するということです。

刑事司法改革の推進

(補足)村越氏は、取調べの全過程の可視化等の実現、弁護人の取り調べ立会権、被疑者段階の公的弁護の拡大を実現させると主張します。村越氏は、裁判員裁判制度については、公訴事実に争いのある事件の手続二分や死刑判決への全員一致制の導入など、「疑わしきは被告人の利益に」をより守れる制度にする必要があると言います。村越氏は、全面的証拠開示や公判前整理手続の改革の推進、高齢者・障害のある人などの、福祉と連携した更生保護の実現に取り組むといいます。

憲法と人権を守る

(補足)村越氏は、次の主張をしています。立憲主義を堅持し、憲法の基本原理を守る。特定秘密保護法の廃止を求め、共謀罪に反対する。国際人権基準の国内実施と国際活動の強化。子どもの人権保障。高齢者・障がいのある人の権利の擁護。貧困問題対策を強化する。消費者市民社会を確立する。人権擁護のための活動強化。

東日本大震災復興支援・原発被害者の救済

(補足)弁護士・日弁連は、被災者・被害者へのサポートを継続し、強化すべきであると村越氏は言います。

男女共同参画の推進

(補足)村越氏は、日弁連において、性差別的な言動や取扱いの防止を徹底し、就職・処遇における男女平等を実現すると主張します。女性弁護士偏在のさらなる解消も進めるといいます。

弁護士自治の堅持、弁護士の孤立化防止

(補足)村越氏は、日弁連として、弁護士自治の重要性について会員の理解と自覚を促すと同時に、弁護士会・弁護士の役割を積極的に発進し社会の理解を求める等と主張しています。また、弁護士のメンタルヘルスの問題に着目し、カウンセリングや相談体制を整える必要があると主張しています。

私の受け止め方

村越氏の主張は総花的で、肝心なところが踏み込み不足

村越氏の主張は、総花的です。おおむね弁護士会・日弁連の各委員会が推進している政策を並べただけのように思えます(人権擁護分野のところに特に力点が置かれている気はしますが。)。

それゆえ、私も、弁護士として、賛同できるところも多々あります(特に、「司法基盤の整備」、「民事司法改革の推進」、「刑事司法改革の推進」は、ここに書いてある範囲では、ほぼ丸ごと賛同できます。)。

しかし、現在の日弁連において、最も弁護士総出で議論しなければならないのは、現在の法曹養成制度が国民・市民のニーズに応えているか、将来禍根を生まないか、このままではいけないとすればどうすればよいか、どう社会に打ち出していくか、ということではないでしょうか。「弁護士の活動領域の拡大」にほどほど頑張ってお茶を濁していれば、なんとかなる、という問題ではない、と思うのです…。

その意味では、「法曹養成制度の改革」の項目が踏み込み不足であり、内容にも問題があります。

武内氏の主張には同意できる点も多いが、必要以上の政治的攻撃性を感じる

武内氏の主張は、その点、法科大学院関係者に遠慮をしないで、現在の問題点を直視しています。真偽の程は定かではありませんが、武内氏の主張するように、政府が法科大学院に斬り込まない代わりに「法曹有資格者」制度を作ろうとしている状況があるのであれば、大いに問題視すべきだと思います。

ただ、選挙公報の結びで、「今、政府は、国会での絶対多数を背景にして、経済的強者の利益のため、個人の尊厳を踏みにじり、他国の市場と権益を獲得するべく、日本を戦争のできる国にしようと暴走しています。それを止めるのは、日本を含め世界の民衆です。それに対し政府は、権力によって民衆の抵抗、反発を制圧しようとするでしょう。」というような調子で書かれていて、全体的に政治運動性が強い印象です。(1月15日に送り付けてきたFAX(竹内更一選対ニュース)には、東京都知事選に鈴木達夫弁護士という人物が「一千万人の怒りでアベ倒そう 改憲・戦争・人権侵害を許さない!」をメインスローガンに立候補したと書いてあります。)

このように、強制加入団体である日弁連の会長選で、ところかまわず強い政治的主張を繰り広げることが理解しがたいです。

武内会長が実現されれば、村越会長よりは、法曹養成制度まわりについて忌憚のない発言をしそうです。そして、それに応じて、弁護士間での議論も活発化する可能性は高いと思います。しかし、それもこれも安倍政権の戦争に向けた目論見の一環である、というような主張も簡単に飛び出してきそうで怖いです。

ただでさえ、現状の日弁連会長がときどき行う政治的声明はどうかと思うのに、むやみやたら政治的主張をしそうな勢いがあります。そんな発言をしてもらうために会長にしたわけじゃないのに、と言いたくなるかもしれません。

一応の結論

今回、投票行動をどうすればよいか、非常に悩ましいところです。

本当は、政治的には無難な線を行き、基本的には各委員会の政策を推進するけれども、大学関係の勢力に遠慮せずに言うことは言う、という人物がいいと思うのですが…(宇都宮前会長については、法科大学院強制制度の是非に踏み込まないままだったので、肝心要なところが全くおろそかだったと考えています。)。

若手は、みんな、それどころじゃないかもしれないです…。団結して権力に対抗して平等・公平を勝ち取るという考え方は若い世代にはあまりなくて、それぞれ自己努力してやっていくのが当然だと考えている人が多いんじゃないかと感じますし。