このたび、読売新聞社のYomiuri Online 大手小町のコーナー「小町の法律相談」に、金沢法律事務所 弁護士山岸陽平 への取材に基づいた記事が掲載されました。
今回は、離婚関係の記事で、
Q.夫はテレビっ子でセックスレス、家から出ていってもらうには? というものです。
今回取り扱われているのは、持ち家に関して妻側の実質的持分が多いケースです。
Yomiuri Online 大手小町には、過去、以下の記事も掲載されていますので、ご関心に応じてご覧ください。
Kanazawa Law Office YY Bengo Note
金沢法律事務所 弁護士YYノート
このたび、読売新聞社のYomiuri Online 大手小町のコーナー「小町の法律相談」に、金沢法律事務所 弁護士山岸陽平 への取材に基づいた記事が掲載されました。
今回は、離婚関係の記事で、
Q.夫はテレビっ子でセックスレス、家から出ていってもらうには? というものです。
今回取り扱われているのは、持ち家に関して妻側の実質的持分が多いケースです。
Yomiuri Online 大手小町には、過去、以下の記事も掲載されていますので、ご関心に応じてご覧ください。
今回は,全国の家庭裁判所で用いられている,婚姻費用と養育費の算定表についてご説明します。
まず,その前に,婚姻費用と養育費についておさらいします。
婚姻費用とは,結婚している夫婦について,対等の社会生活を維持するために必要な費用のことをいいます。
婚姻費用の中には,子どもの養育にかかるお金も含まれるため,結婚している間は,通常,子どもにかかる費用も含めて,婚姻費用の問題として解決します。
別居をしている夫婦でも,離婚が決まるまでは,婚姻費用が発生します。
法律的には,「夫婦合わせてかかるお金をどう分担するのか?」という考え方をします。このことを,婚姻費用の分担といいます。
より詳しく知りたい方は,私が婚姻費用について解説したブログを見てください。
養育費とは,未成年者の子どもを監護養育している親が,監護養育していない親に対し請求することができる,子どもの監護養育のための費用です。
上で書いたように,結婚中も当然子どもを育てなければいけませんが,結婚中は婚姻費用として問題が処理されます。よって,養育費(だけ)の問題として浮上するのは離婚後です。
裁判所では,養育費についても,婚姻費用と同じような考え方によって定められています。要するに,親同士の収入の差によって,養育費の額が大きく増減するというわけです。
この考え方をより詳しく知りたい方は,私が養育費について解説したブログを見てください。
養育費・婚姻費用算定表とは,これまで養育費・婚姻費用について説明した考え方をもとに,夫婦(元夫婦)の年収を当てはめたときに,養育費・婚姻費用がおよそ何円になるか,見やすくした表です。
裁判所(東京家庭裁判所)のホームページにも掲載されています。左のリンクをクリックしていただくと,裁判所のページが表示され,実際に使われている養育費・婚姻費用算定表を見ることができます。
また,多くの法律事務所(弁護士の事務所)や各地の裁判所,法テラスなどにも,参照できるように置いてあることが多いです。
この算定表(及び算定表の元になる考え方)は,東京・大阪の裁判官が研究会を開いて作り上げたものであり,東京家裁・大阪家裁だけではなく,全国の家庭裁判所がこれを参考にしています。
養育費・婚姻費用が訴訟や家事審判で決まる場合には,裁判官や家事審判官がこの算定表に重きを置いて額を決定することが非常に多くなっています。
養育費・婚姻費用が家事調停で決まる場合にも,多くの弁護士や調停委員は,この算定表を参考にします。弁護士や調停委員には,この算定表に対して賛成意見と反対意見がありますが,裁判所が重視している算定表ですので,無視できないのが実情です。
なお,この算定表は,最大で子どもが3人のケースまでしか掲載されていませんが,子どもが4人以上いても,算定表の考え方を元に計算することが可能です。
よく,夫婦(元夫婦)の片方又は両方から,「自分たち夫婦(元夫婦)の場合,算定表のままではおかしいと思います。○○の事情があるからです。」といった意見が出ることがあります。
算定表は,あくまで統計を元に,標準的なケースで妥当する額を示していますので,そのような意見が出ることは当然だと思います。
しかし,裁判所の裁判官の多くは,この算定表は,「それぞれの夫婦には事情があり,完全に標準的なケースなどはない」という前提で,額の幅を持たせて作られているのだから,あまりに特別な事情がない限りは,額の幅のうちの最大限・最小限をとることで済む,と考えているように思います。これは,私が,何件も,養育費・婚姻費用の算定についての争いを扱った上で感じていることです。
一方の弁護士が増額方向での事情を挙げれば,もう一方の弁護士が減額方向での事情を挙げる……。そんなケースも多いなかで,裁判所は,基本的には算定表を基本に置きつつ,夫婦双方の事情を踏まえて額を決めていると思われます。
ですから,弁護士が付いたというだけで,大幅に額が増減するというものではありません。やはり,基本となるのは,夫婦(元夫婦)の収入額や夫婦ごとの事情です。しかし,養育費や婚姻費用の問題を抱えた方が裁判所や相手方に対し,適切なタイミングで適切な主張をするためには,養育費・婚姻費用について,裁判所の実務を理解している弁護士に依頼・相談するということは重要であるといえます。
最終的に,「養育費・婚姻費用算定表とは何か?」という話がしたいのですが,その前に「養育費・婚姻費用とは何か?」を押さえておく必要があります。
そのうち,今回は,婚姻費用についてお話しします。
「婚姻費用」とは,夫婦の社会的地位や身分等に応じた夫婦対等の社会生活を維持するために必要な費用のことをいいます。
対等,ということで,家計が別管理になっていれば当然収入によって差が付きますから,「分担」して調整しなければならないことになります。
では,どうやって分担するか。
ここで出てくる考え方が「生活保持義務」です。
「生活保持義務」とは,自分の生活を保持するのと同程度の生活を保持させる義務,です。
要するに,「生活の保持」という観点では,配偶者に対しても自分と同程度の生活をさせる責任があるということです。
注意すべきなのは,これは,別居中でも妥当するということです。
・・・まぁ,弁護士が入って配偶者に請求する場合は,ほとんどが別居中の場合ですね。
また,どちらが子どもを監護(要するに,同居して世話)しているか,ということも踏まえて算定されます(その意味では,婚姻関係が続いているうちは,子育てにかかる費用も,婚姻費用の分担の内の問題です)。
婚姻費用の分担額とは,収入の多い配偶者から収入の少ない配偶者に支払われる金銭のことです。
ここで,収入の多い配偶者を義務者(分担金を支払う義務がある者であるので)とよび,収入の少ない配偶者を権利者(分担金を受け取る権利がある者であるので)とよびます。
この金額をどう算定するかについては,いろいろな考え方がありうるところでしょう。
実務の考え方(別居中の夫婦の場合)では,夫婦双方の収入を合算し,夫婦の収入の合計を世帯収入とみなし,別居中の夫婦どちらが何歳の子どもを何人監護しているかによって,世帯収入の分け方がほぼ自動的に決まってくる,その結果,義務者が権利者に支払うべき金額が算出される,というようになっています。
裁判所で使っている計算式では,ここでいう「収入」とは,税込収入から「公租公課(税金などのことです)」・「職業費(仕事用の被服費・交通費などです)」・「特別経費(住居関係費・保健医療費などです)」を控除した金額のことをいい,これを「基礎収入」と呼んでいます。
この基礎収入についても,裁判所は,通常の場合は,個別事情に応じて計算するわけではなく,統計上,給与所得者の場合は総収入の約34~42%が基礎収入になることが多く,自営業者の場合は総収入の約47~52%が基礎収入になることが多いとされていることから,この推計値を使っています。
そして,裁判所で使っている計算式では,夫と妻は生活費の指数が100。15歳~19歳の子は生活費の指数が90(成人の90%)。0~14歳の子は生活費の指数が55(成人の55%)。この数字で計算されます。
推計で公租公課・職業費・特別経費を控除したり,子育てにかかる費用を数値化したりしているけれども,実際自分たち夫婦の場合には特別な事情があるのに,それが考慮されないの? という疑問は当然出てくるところでしょう。
このことについて詳しくは算定表についてのお話のなかで書きたいと思いますが,一言だけ書いておくとすれば,「あくまで標準的な婚姻費用を簡易迅速に算出するために計算式や算定表を用意した」と裁判所は言うけれども,やはり計算式や算定表で出た結果を裁判所は重視していて,各夫婦の個別的な事情を考慮して計算式や算定表から大幅に外れた額を裁判所が決めることはあまり(ほとんど)ない,ということです。
ですから,弁護士としても,計算式・算定表への賛否は分かれても,計算式・算定表を無視するようなことはできないのです。